番外編 美少女盗賊ノーナ旅に出る
私はノーナ。父は海賊で母は盗賊という「賊一家」に生まれ育った。
小さい頃はそれが元でプチ家出をよくした。
でも成長するに従って、私にも「賊」の遺伝子がしっかりあるのを自覚した。
街を歩いていて、お金持ちの家の蔵を見ると、どうしても押し入りたくなる。
海を見に行くと、嵐の中を航海したくなる。
でもそんな衝動を押さえられたのは、とても可愛いボーイフレンドがいたからだ。
彼がいなければ、私は確実にお尋ね者になっていた。
彼の名はネコにゃん。
とっても可愛いトラネコだ。しかも人語を理解し、その上話す。
人間と猫という違いを超えて、私達は愛し合っていた。
ところがある日、私が母と共に隣のモリアーオ王国に出かけて何日か留守にしていた時、彼はいなくなってしまった。
私は思いつく限りの空き地や屋根裏を探したが、ネコにゃんの姿は見つからなかった。
私はおかしくなりそうだった。
そして母に相談し、ネコにゃんを探す旅に出かける事にした。
「お前は可愛過ぎるから、男の子の格好をしなさい。でないと、良い子のフリした変態に襲われてしまうよ」
母のアドバイスで、私は男装の麗人となり、故郷ドウホクカイ王国を出発した。
たくさん持って来た所持金も底をついて来たのに、ネコにゃんの居場所はわからなかった。
どうしよう? 一度引き返そうか?
そんな事を思っていた時、ネコにゃんを見たという人に出会った。
「その猫なら、もっと南で見かけたよ」
私はもう少し頑張ってみようと考え直し、南を目指した。
でもそこまでだった。
お金は完全になくなり、身動きが取れなくなった。
「どうしよう……」
途方に暮れていた時、目の前を噂の勇者一行が通り過ぎた。
「あれが、勇者様?」
私は勇者様のオーラのなさに違和感を持った。
ホントに勇者? そう思った。
「?」
でも、その勇者様から、「金」の匂いがする。
それもかなり大量に。
よし。頂こう。
ネコにゃんと会えない日々が続いた上、飢えと渇きに苦しんでいたので、迷いはなかった。
勇者一行が宿屋に入るのを確認し、夜を待つ事にした。
まさかそれが、ネコにゃんとの再会に繋がるとは夢にも思わずに。