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御徒町樹里の冒険(改)  作者: 神村 律子
魔王コンラ編
2/52

出会い編

 僕は勇者。


 この世を闇に包もうとしている魔王コンラを倒すため、旅をしている。


 パーティは今四人。


 但し偏った戦力だ。


 勇者の僕、戦士のリク、遊び人のヤギー、武闘家のカオリン。


 要するに魔法使い系がいない。


 特に遊び人のヤギーはいない方がマシなくらいだ。


 余分な食費と宿泊費で、我がパーティは破綻寸前なのだ。


「魔王コンラは魔界最強の魔法使い軍団の頂点と聞いている。このままでは僕らは勝ち目がない」


 僕は宿屋での作戦会議で言った。


「確かに。でも私の知り合いには魔法使いはいなくてよ」


 武闘家なのに妙に色っぽいカオリンが言う。コスチュームも露出が多くて目のやり場に困る。


「アッシにも魔法使いのダチはおりやせんねえ」


 尋ねたくもないのにヤギーが口を挟んだ。こいつの事はあまり語りたくない。


「大丈夫だあ。オラとカオリンの力で、勇者様をお助けするだあよ」


 田舎戦士のリクは抜けない訛り丸出しで言ってのけた。巨体の割には機敏な男である。


 リクはカオリンにベタ惚れなのだ。でもカオリンはまるで相手にしていない。


 端で見ていて痛々しいくらいだ。


「ある程度の魔法攻撃は僕の防御呪文とカオリンの気合で防げるけど、それにも限界があるよ」


 僕の言葉にさすがに全員が暗い表情になった。


「探すしかありませんわね、魔法使いを」


 カオリンが意を決したように言った。リクは嬉しそうに頷き、


「んだ、んだ。探すべ、探すべ」


「そうだな」


 僕は同意した。


「もう一杯お酒頼んでいいでやんすか?」


 場の空気を読めないヤギーを僕は睨みつけた。




 そして翌日。


 僕らは魔法使いを探して、彼らが棲むという森を目指した。


「あれか」


 半日ほど歩くと、前方に大きな森が見えて来た。


「そうですわ。あれは迷いの森。魔法使いの結界で守られている場所」


 カオリンが言った。


「よーし、探すべ」


 リクはズンズンと森に入って行ってしまった。


「ダメだよ、リク! その森は迷いの森なんだ、うかつに入るな」


 僕が止めるのも聞かず、リクは森の中に消えた。


「仕方のない人ですわね」


 カオリンが肩をすくめて僕を見た。


「ああ。即行動のところはいいんだけどね」


「ええ」


 ヤギーはその間近くの石の上で寝ていた。このまま置いて行こうかと思った時だ。


「おおい、見つけたぞい」


とリクが戻って来た。彼の後ろに、フード付のローブを着て杖を持った女性がいる。


「いたいた、めんこいだろ?」


 リクはニヤニヤして女性を紹介した。


御徒町おかちまち樹里じゅりと申します。よろしくお願いします」


 か、可愛い。カオリンと違って色気はないが、可愛過ぎる。


 その時、隣から何やら凄まじい嫉妬の炎を感じた。


「不思議なお名前ね、御徒町樹里さんて。オーホッホッホ」


 カオリンが会話に割り込んだ。何だか悪役のような笑い方だ。


 確かにこの世界で「御徒町樹里」という名は奇妙だ。


 でも可愛いから許す。


「おおお、これはこれは、カオリンさんよりお若い方が…」


 バキッと音がして、ヤギーが倒れた。余計な事を言うからだ。




 こうして僕らは一人仲間を増やし、旅を再開した。




 そして迷いの森からしばらく歩いた頃。


「お前ら、勇者一行だな?」


 突然魔王軍の兵士が現れた。


「死んでもらうぞ!」


 僕らは奇襲同然の攻撃を受けてしまった。


「くそ!」


 僕とリクとカオリンが兵士を次々となぎ倒す。


 ヤギーはただ後方で応援しているだけ。


「まだだ、まだ終わらんよ!」


 どこかで聞いたようなセリフと共に魔王軍は増援部隊を呼んだ。


 ダメだ。数で来られてはきつい。


 ここは一つ、樹里ちゃん(と呼ぶ事にした)の魔法で蹴散らしてもらおう。


「樹里ちゃん、頼む、助けてくれ!」


 僕は増援部隊をリクと押し返しながら叫んだ。


 ところが、驚愕の返事が返って来た。


 樹里ちゃんは笑顔全開で、


「私は、お料理とお洗濯とお掃除が得意です」


「……」


 魔法使いじゃねえのかよー! 紛らわしいカッコで迷いの森にいるなー!




 僕らのパーティは惨敗し、魔王軍の捕虜になってしまった。


 それからどうなったのかはまた次回のお話で。


 そしてふと気づくといつの間にやらヤギーは姿を消していた。


 あのヤロウ。いつかぶちのめしてやる。

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