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 晩餐会は比較的年配の男女が招待されていたので、マーガレットに言われただけでそれ以上真実の愛について聞かれる事は無かった。問題は次の一週間後の舞踏会。出会いの場でもあるので若い独身の男女の参加が多い。いつも令嬢に取り囲まれるのは舞踏会でだった。今回は両親は参加しないので一人だ。


 ハーマン公爵令息の名前を知らなかった事が、執事から父に話が行って父に長時間説教された。反省して今までペラペラと関係ある家だけ見ていたのを、すみからすみまで熟読して、貴族年鑑の暗記もした。毎日今更ながら貴族としての常識を学んでいる。


 これで今回の舞踏会は無事にやり過ごせるかもと、身だしなみを執事に360度チェックしてもらって出発した。


 いつもなら入場した途端令嬢に取り囲まれて、ダンスを強請られていたが、今日はそんな事なく、歩を進めるのになんら支障はなかった。こういうのを望んでいたはずなのに、少し寂しい。そう思うことを恥ずかしく思い、ジークハルトは反省した。我ながらこれではいけないと思う。


 男性専用になってる喫煙談話室には顔馴染みの貴族令息達がいた。


「やあ 久しぶり。真実の愛の恋人はエスコートして来てないのかい?」


 含み笑いをしながら、長い付き合いの伯爵令息のカイルが声を掛けてきた。


「長い付き合いなのに恋人を紹介してくれないなんてつれないな。あのハーマン公爵令嬢との見合いも辞退するほど大事にしているんだろう?」


 これはおちょくってるのか真剣に言ってるのか普通なら悩むところだが、長い付き合いでわかる。おちょくってるのだ。


「ハーマン公爵令嬢と見合いができるだけでも望外の名誉だよ。それなのに自分から辞退するのだから君の恋人は絶世の美人だと噂だ。怖気付いて普通の令嬢はもう君の周りを彷徨かないよ。いつも嫌がっていたからよかったな」


 なるほどな。まとわりつかれたくないから、それは良い事だ。一生結婚できないかもしれないけどな……


「恋人には振られたよ」


 事実だけ述べる。女装男子に騙されたなんて絶対言えない。


「えー じゃあなぜハーマン公爵令嬢との見合いを辞退したんだい?」


「見合いの時はまだ別れてなかった。見合いを辞退してから、別れたんだよ」


「それはなんてバッドタイミング。でもまあハーマン公爵令嬢に本気になったら、泣くしかないから丁度よかったのかもな」


 何言ってるのだろう。ミケーレは一点の瑕疵…いや面白がる癖はあるけれど…もない令嬢なのに。


「何を知ってる?」


 カイルはハッとしたように顔の前で手を振った。


「いや 独り言。忘れてくれたまえ」


 この男は軽く見せているが、貴族の間の噂とかの情報通なのだ。そして相思相愛の恋人がいる!くやしーーー


「じゃ ジョアンナが女友達とのお喋りから戻る頃だから行くわ」


 カイルがホールに戻ってしまったので、自分もホールに行って知り合いと話さねばと重い腰を上げた。

 ホールに出たら皆聞く事は真実の愛の恋人について。別れたと言っても根掘り葉掘り聞く年配のご婦人や説教を垂れる紳士。そろそろ疲れて来て、バルコニーに風に当たりにいった。


「あの ジークハルト様」


 若い女性の声がした。名前を呼んでいいと許可した若い女性は今日見かけなかったけれどと振り返ったら、いつも自分を取り巻く令嬢方の後ろにいてこちらに張り付く視線を寄越していた令嬢だった。

 残念ながら話したこともない。名前も知らない。また執事に残念なもののように見られるかもと視線をその令嬢に向けた。


「ジークハルト様 ジークハルト様は真実の愛を間違えています。あなたの真実の愛は私です。私と真実の愛を育んで下さい」


 ジークハルトは何も言えなかった。名前も知らない令嬢と愛は育めないなと思った。


「あらあらこんなところで愛の告白?」


「マーガレット嬢!」


 マーガレットが婚約者にエスコートされて立っていた。ジークハルトはほっとした。


「ヴァイス男爵令嬢 あなたはブーゲル侯爵令息に名前を呼ぶ許可はいただいたの?彼方此方で高位貴族令息に声を掛けているようだけど、礼儀は守ってちょうだい。先日も『マーガレット様はわがままでお辛いでしょう。私が慰めて差し上げます』と私の婚約者に言ったそうね。私のどこがわがままか教えていただける?」


 ずいっとマーガレットがヴァイス男爵令嬢に近づいた。ヴァイス男爵令嬢は慌てて後も見ずに駈け去った。ジークハルトは貴族令嬢が脛を見せて走っていいものかとぼんやり見てた。


「ジークハルト様 あの方は高位貴族狙いなの。真実の愛の次はああ言うのに引っ掛からないでよ。あなたもカイル様並に情報に耳を傾けないとね」


 マーガレットの婚約者は『言い過ぎだよ』と苦笑いしてジークハルトに会釈して、マーガレットをエスコートして去った。そこにカイルがやって来た。


「いやーマーガレット様は優しいな。この世代の公爵令嬢は当たりばかりだね。助けに入ろうかと思ったけど、マーガレット様に助けていただいた方が角が立たないしね」


 カイルの後ろからジョアンナが顔を出した。


「あの子マリーと言うのだけど、公爵、侯爵の令息に媚を売るのよ。先日は王太子殿下にも擦り寄ろうとして、近衛に阻まれていたわよ。すごいメンタル」


 ジークハルトは自分の物知らずを恥じた。けどすでに前科持ちなので騙されないで女性と付き合えるか不安になった。

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