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「恐れながら殿下。それは公爵家の帳簿であります。二重帳簿です」


 進み出たダンドール子爵をユリウスがじろりと睨んだ。美形の睨みは物凄く、思わず二、三歩後ろに引き下がった。それでもまだ強気に言う。


「我が家はにはそれと違う金額が入った帳簿がございます。それを証拠として提出いたします」


 王太子はぱんぱん手を叩いた。


「それには及ばない。お前の娘のマルガリータが私の側近のジークハルト・ブリーゲル伯爵に近づいた時に綿花栽培の調査を入れた。そして帳簿は押収してある」


「い いつの間に!」


「お前らがくだらん陰謀で領地を留守にしている間に調査員を入れた」


 ユリウスがまた紙束を王太子に渡す。


「ダンドール子爵家では買って貰った金額より低い金額で売ったとして帳簿を作っている。そしてその金額で国に税金を納めているな。税金を誤魔化す典型的な手口だ。ユリウスにばれないと思うとは愚かな」


「そのような!」


「証拠はある。申し開きは陛下の前でしてみよ」


 がっくり項垂れるダンドール子爵。それなのにマルガリータはまだわかっていないようで王太子にすがりつこうとする。それを近衛騎士が取り押さえられた。


「安易にジークハルトに娘を近づけたのが敗因だな」


 ユリウスが言った。うん 囮として役に立ってるがなんか悔しいと思うジークハルトであった。


「それからスターリン伯爵」


 手下が捕まって青褪めたスターリン伯爵はビクビクしていた。


「お前の手駒のクラリッサ王女は王太子襲撃未遂で監禁してある。しかもジークハルト・ブリーゲル伯爵を愛人にしたいと申し出たがこれのどこが私を一心に慕っているんだ?真の貴婦人は婚姻前から愛人を要求するのか?」


 あらーまた名前が出た。役に立ってるな。変な方向で。


「それにスターリン伯爵、クラリッサ王女から金を受け取ったな。そしてクラリッサ王女が王太子妃になったら陞爵を約束し領地を増やす約束もクラリッサ王女としているな」


「そ そのようなことはしておりません」


「残念ながらお前の印を押した契約書をクラリッサ王女が持っていた。クラリッサ王女は母国で元婚約者の妻を毒殺しようとして失敗している。証拠が見つかったので、クラリッサ王女の母国から引き渡し要請が来ている。あちらの国王はクラリッサを王族から排除した。すでに貴族ですらない。連れていけ」


 近衛騎士達がスターリン伯爵オルノー子爵親子ダンドール子爵親子を引き立てて行った。


 王太子は周りの貴族達をぐるりと見回し言った。


「一番大事なことをあいつらは忘れてる。この私があんなに浅ましい女達を娶るわけがないと言うことだ」


 うんうん 王太子殿下はミケーレ嬢のようなツン女性に尻に敷かれるのが好きだからねーと内心の呟きがカイルと合致する。


 これで一件落着?と思ったらボーデ公爵が娘マーガレットを連れて進み出た。


「いやはや 愚かなもの達でしたな。あんな事が暴露されないと思うなど愚かの極みでございます」


 落ち着いた高位貴族らしい豪奢な服装をしたボーデ公爵は王太子の前まで進み出た。


「ですが、ミケーレ嬢が危篤の一報は私にも届いております。三週間後の婚儀のみならず今後の王太子妃をどうされるかが問題でございます。先程王太子殿下が申されたように、王太子妃は教養が必要でございます。そこで私は非の打ちどころのない我が娘を推薦いたします。この様に美しく高位貴族としてしっかりと教育しております。所作も美しく宮廷の花と呼ばれておりました。なのに王太子殿下より年上と言うだけで妃候補から漏れてしまい悔しく思っておりました。ミケーレ嬢が危篤の今マーガレットをお使いください。王妃としての公務も三ヵ国語を話せますし、国内の実情にも明るいので十分務まります。マーガレットも王太子殿下をお慕いしておりますし、殿下もお会いするたびに我が娘に好意を向けていただいております」



 ながーい台詞をよどみなく言い切った。周りの貴族から『なるほどボーデ公爵令嬢なら…』とか『美しいですな』などの声が上がった。マーガレットが王太子の前に進み出て、見本の様な貴族令嬢の礼をした。


「ボーデ公爵が娘 マーガレットでございます。殿下の妃になれるなど夢の様でございます」


 それを見てユリウスが言った。


「マーガレット嬢 あなた婚約者はどうされた?」


 マーガレットが答えずにボーデ公爵が答えた。


「スターリン伯爵の次男でしたので、私が父親が怪しいと感じ、婚約解消させました。元々伯爵家次男では相応しくなく、二人もよそよそしい仲でしたので娘もほっとした様です」


 そうか?そうか?いつも一緒で仲良さげだったのだが?周りの皆の内心の声が合致した。そこに


「おーほほっほほ おーほっほ」


 と悪人の様な笑い声が響いた。






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[一言] なんて有能な誘蛾灯だ!(泣)
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