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 ジークハルトはあまりの衝撃にまんじりともできなかった。寝起きは最悪だった。

 それでも仕事はまだ沢山待っている。なんとか身支度して、最近はニーナもジークハルトが令嬢に見染めてもらえるように飾り立てる事を諦めたようだ。無言で使用人達に見送られて、のろのろと馬車に乗って登城した。


 足取り重く執務室に向かう。ああ 陛下がクラリッサ色好み王女のもてなしをしろと言ったらどうしよう……私の貞操が風前の灯火だ。


 執務室に入ると文官達が挨拶してきた。奥に目をやるとユリウスがいた。ジークハルトに続いてカイルが入ってきたのを見たユリウスは二人を執務室の小部屋に誘った。


「昨日はご苦労だった。クラリッサ王女の相手は大変だったろう」


「はい まさか肉弾戦で来るとは」


「扉を砕いた二人は逮捕されて牢に入れた。王太子の執務室の扉を砕いたのだ。重い罪になると思う」


「あの二人はクラリッサ王女が母国から連れて来たわけではない?」


「クラリッサ王女は兄の国王に逆らって出国してきているので、供は連れてこれなかった。あの二人はこの国に入国したときに世話をした貴族が当てがった供のうちの二人だ。他に侍女がいたので捕縛して尋問中だ」


「クラリッサ王女は?」


「堂々と陛下に拝謁を申し出て、扉を斧で粉砕してジークハルトを見染めたことまで自白したので、王太子襲撃未遂として監禁した。某国に知らせたのであちらから迎えに来るだろう。賠償金持ってな」


 クラリッサ王女は知能が足りないのか?他国で傍若無人に振る舞って許されるわけもないのに。


「ユリウス様は昨日のことは私達はお知らせしませんでしたがいつお知りに?」


「ああ すぐに宰相から知らせが来たので、クラリッサ王女の監禁と供の逮捕まで指図した」


「????」


「私は王宮にいたのだよ。今回のことで尻尾を出してくる奴らを捕まえるためにね」


「あのー ミケーレ嬢の具合は?」


 ユリウスはミケーレを心配して公爵家に閉じこもっていたのではなかったのか?ジークハルトは気にかかっていたミケーレについて尋ねた。


「クラリッサ王女はミケーレが病気だと知っていただろう?」


 ユリウスはそれには直接答えずにそう聞いた来た。


「はい もう死にかけていると言っておりました。極秘事項なのになぜ知っているのかと。やはり……」


「そう 国内で手引きしている貴族達がミケーレに毒を盛って、クラリッサ王女を引き入れたのだ」


「ハーケン公爵家の令嬢が王妃になったら困る奴らがいると言うことですね?」


「そうだ。ジークハルト、なかなか考えられるようになったな」


 ユリウスに褒められたジークハルトは嬉しかったが、ちょっと複雑だ。そんなにひどいと思われていたのか……


「王太子妃候補は自薦他薦でごろごろいた。この国では王族も幼い頃からの婚約者は置かないけれども、教養もない令嬢では公務ができない。結局きちんと教育された高位貴族令嬢から選ぶことにはなる。数年前から王太子はミケーレに決めて口説いていたのだよ」


 ユリウスが面倒くさいという顔をした。


「王太子殿下の気持ちはミケーレにあるのだから、もうこれで決まりだろうと思っていたのにクラリッサ王女が婚約者を捨ててまで乱入してきて、ミケーレに余計なことを吹き込んだりして無茶苦茶になった」


 ああ それで私と見合いしたのか……うん 黒歴史…ジークハルトは思った。



「私がクラリッサ王女の兄の王太子と連携してクラリッサ王女を溺愛していた国王にこの世からお引き取り願った。暗愚な王だったらしくて王太子ももう待てないと思ったらしくすぐ話に乗ってくれた。こうして王女を溺愛してやりたい放題させていた国王を亡くしたクラリッサ王女は一旦は殿下を諦めて、元婚約者の伯爵令息の元に戻ろうとしたら、もう元婚約者と結婚していた。激怒したクラリッサ王女はその妻を毒殺しようとして失敗した。新国王が取り調べている途中に我が国に逃げて来たのが真相だ」


 すごい己の欲望にだけ忠実だ。


「そのクラリッサ王女の欲望を利用して、ミケーレ嬢を亡き者にしてクラリッサ王女を王太子妃に据えようとしたわけですね


 カイルがユリウスの方を見て言った。


「でもクラリッサ王女を王太子妃にして、我が国の貴族にどんな利益があるんだ?」


 ジークハルトがカイルに聞くと


「傀儡でしょうか?ミケーレ嬢に公務をしろと言ったぐらいだからクラリッサ王女は公務ができる教養はないのでしょう。そこを付け込んで王太子妃にさせてやるが、側妃に貴族達の都合のいい娘を送り込もうとしている」


 と言った。


「その貴族は……」


「手下はオルノー子爵、ダンドール子爵なのは証拠が出た。あとは黒幕だ」


 ユリウスは含み笑いを漏らした。


「さあ 舞台に上がってもらおう。君たちもおいで」


 何が始まるのだろうか。

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