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「ミケーレ嬢が病気?」


「そうだ。医者に診せても原因はわからない。とにかく衰弱して起き上がれないので王宮に入るのは延期になった」


 ユリウスは美しい眉をひそめてそう言った。


「婚儀は?」


 カイルが恐る恐る尋ねる。


「今更ずらせないのでそのまま準備を進める」


「回復できるのですか?」


「全くわからない。それですまないが、しばらくミケーレに付いていたいので執務室を任せていいか?」


「わかりました。準備は進めておきます。例の女官長もあれから王妃様に訴えなかったのか、王妃様からの抗議も来ていませんし」


 カイルが引き受けた。ジークハルトも隣で頷く。


「殿下とはどのように話が付いているのでしょうか」


「殿下は今陛下に呼ばれている。ミケーレの病状については殿下に伝えてあるから、二人は婚儀の準備を進めてくれるだけでいい」


「女官長の問題は解決していませんが静観でよろしいのでしょうか」


 ジークハルトは自分が持ち込んだ話なので気が揉めた。


「新しい商人から買い求めるのも女官長のみだと調べが付いてる。不審な料理人三人も解雇して王都から追放した。女官長は王妃様を唆して抗議もしてこないので、女官長をどうにかできない」


 確かに怪しいが罪を犯したとまでは言えないので罰する事はできない。ジークハルトは考え込んでしまった。マルガリータが持ち込んだ件だが解決しそうにないなと思った。


「わかりました。ユリウス様が抜けた穴は大きいですが頑張ります」


「頑張ってくれ」


 ユリウスは二人を激励してそそくさと帰邸して行った。しばらくすると王太子が執務室に戻ってきた。疲れたようにどさりとソファに身体を投げ出して座った。


「ミケーレの病のことは聞いたか?狙い済ませたように某王女=クラリッサ王女がやって来た。兄の国王が出国しないように止めていたのにだ。誰か国内で入国できるように手引きした奴がいる」


「追い返せないのですか」


「国王が行くなと止めていても、犯罪者でもない王族だ。招いて無くとも来てしまえば受け入れるしかない。多分かなり前に入国していたのだろう。そうでないと明日王宮に到着しないだろう。明日から私に国内を案内しろなどと馬鹿な伝言もつけてな。この前長期滞在した時に散々振り回されたのにだ。そのおかげで私はミケーレに見放されかけた。今度はクラリッサ王女は後ろ盾が無い。某国王からは相手にしなくていいと確約ももらった。丁重に扱う必要がないからクラリッサ王女の要望は全て無視する。今陛下と宰相の了解は得てきた。私は姿を晦ますからあとは頼んだ。クラリッサ王女は執務室にも乱入してくるから頑張れ。前回も仕事があると断ったのに乱入してきたからな。ユリウスがいないからお前達が対応することになる。頑張ってくれ」


 王太子はそれだけ言うと王太子の印と重要書類を侍従に持たせて去って行った。あのー某王女=クラリッサ王女の対応をカイルとジークハルトが……できるわけないー肉食王女の世話をしろと言うのかーーーーー


 それでも仕事はある。2倍になった仕事にうめいていたら(ユリウスの仕事を二人で分けて請け負ったら1.5倍でなく2倍になった……なぜ……)執務室を訪ねて来た者がいた。


「ジークハルト様 よろしいでしょうか?」


 マルガリータが扉の陰から呼んでいた。


「どうされましたか?」


 カイルに断って(にやーとされたが)また庭園の片隅で話をする。


「あの ジークハルト様」


 あれ?マルガリータに名前呼びを許した覚えは無いのだがと思った。


「あの 女官長の話はどうなったのでしょうか」


「女官長が雇い入れた料理人は相応しくないので解雇しました」


「では商人は?」


「まだ静観です」


「そんな……あの……王太子殿下はどちらにおいでなんでしょうか?」


「なんのことでしょうか?」


「王太子殿下のお姿をお見かけしないと女官の間で噂になっていて……」


「おかしいですね。殿下は執務していらっしゃいます。婚儀が近いのでお忙しいだけです」


「でも、でも本当に最近お見かけしないのです」


 マルガリータは焦ったように食い下がる。


「女官殿、殿下がどこにいらしても女官には関係ありませんよね」


 マルガリータは顔色をサッと変えて、慌てたように走り去って行った。後ろからカイルが樹木をかき分けて出てきた。


「やっぱりね。殿下の行方を探って来たか。お前ならちょろく聞き出せると思ったのに反論されてびっくりしたってとこか」


 いやーーーもう!そんなにちょろそう?


「王宮でミケーレ嬢の悪い噂を流してる女官がいると言うので探ったら、マルガリータ・ダンドールに行き着いた。ミケーレ嬢に助けて貰って感謝してるはずなのにだ。悪い噂を流しておいてミケーレ嬢を心配して女官長の振る舞いを告発してくる。行動がちぐはぐでおかしいとは思ったので接触して来るのを待っていたが尻尾が出てきたかもな」


 ジークハルトはカイルから報告を聞いて、心積りがあったので反論できた。女官長の仕事じゃないと女官長を告発したのに、自分の仕事じゃない殿下の行方を探る。おかしいと流石に恋愛脳のジークハルトでもわかった。あーあ春は遠い。

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