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「カイル 子爵家周辺の聞き込みはどうだった?」


 ジークハルトがカイルに尋ねるとカイルはお手上げだと言うように両手を挙げた。


「そりゃもうガードが固い。使用人も余分な事は言わないように躾けられてる。下働きまでもだ。一応は子爵家の評判は聞き回ったが、某国との貿易の商会に出資してるぐらいしかわからなかった」


「では女官長が一番ガードが緩そうだな。自分の権力は絶対と思い込んでゴリ押しで商人を入れたり、料理人を雇ったりした。誰も反論できないと思ってるわけだ」


 ユリウスはカイルのまとめたオルノー子爵家が出資した商会資料を読みながら言葉を続けた。


「女官長は王妃様に縋るだろう。ああいうタイプは権力を笠にきる。殿下に報告して王妃様から話があったら殿下に対応してしてもらおう」


「ユリウス様 オルノー子爵令嬢はどんな方ですか?」


 ユリウスがニヤリと笑った。


「ジークハルトが一番嫌いな貴族令嬢の典型だよ。ちょっとでも地位が高く、見目麗しい男に自分を売り込みたいとね。それに女官長の娘だが女官長に似ず容姿はいい。小柄で可憐なタイプだ。ちょろい男ならすぐ騙されそうだ」


 ユリウスとカイル視線がジークハルトに集まる。え 自分はちょろいと思われてるのかと脇汗が流れるジークハルト。そこに被せてカイルが笑いながら言った。


「お前を取り囲む令嬢方の中の一人だったけど覚えはないのか?」


 全くない。あの頃はエマ…エールだけど に夢中だったので他の令嬢なんて目に入って無かった。


「それにしても、子爵令嬢じゃ正妃なんて無理だろうに、どう言うつもりなんだろう?まだミケーレ嬢を正妃にして愛妾に収まるならわかるけれど。側妃は伯爵令嬢以上でないと無理だ……」


 とカイルが言いかけた時執務室の中のカーテンが思い切り開けられた。


「やめろ!側妃だの愛妾だの娶る話をミケーレに聞かれたら破談になってしまう!!!!」


 どうやら殿下は執務室の奥の仮眠室で休憩を取られていたようだ……うん ミケーレの尻に敷かれているのは相変わらず。


「殿下、ミケーレはいません。この三人での内輪話です。文官も出払っているので、ご心配無く」


 ユリウスが苦笑いしながら説明する。王太子はユリウスをじろりと睨んで


「王家に嫁ぐと側妃だの愛妾だの娶り放題なのが嫌、殿下の事は好ましく思ってもそれは嫌!と言うのを君一人だからと説得して婚儀に漕ぎつけたんだぞ!ユリウス知ってるだろう!」


 と叫ぶ。ユリウスは可哀想な子を見る様な眼で王太子を見た。


「某国の某王女がこの国に滞在していた頃ミケーレに接触しましてね。某王女が『わたくしは殿下に望まれてしまったわ。殿下の心変わりを責めないで。公爵令嬢より王女の方が将来の役に立つのよ。わたくしが王妃になるの。でも王妃の公務は煩雑で面倒だから実務をあなたにやってもらいたいの。そのためだけに側妃になってもいいわ。あなたはもちろん白い結婚だけれどね。好きな方のお役に立てて本望でしょう?』と言ったのです」


「あのーーー糞王女め。ただではおかん!」


「某王女は殿下に滞在中べったりでしたからそれは誤解されます。ミケーレにちゃんと言っておかないからですよ。この話もミケーレから聞いてないのですか?」


「女の趣味が悪いようですのでお話ししたくありませんとだけ言われて、誘っても誘っても応じてもらえなくなったのはそのせいだったのかーーーー」


 話し合ってください。殿下。これが三人の心の声である。


「あーごほん 某王女からは某国の某国王が亡くなってから何も言ってこないのが不安でもある。警護は厳しいに越した事はない。ジークハルトの対応はそれでいい。女官長が母に何か言ってきても私が対応するから」


「よろしくお願いします」


 ジークハルトは王妃について詳しくない。自分の側近だからと女官長の横暴を見逃す人なのだろうかと思った。王太子とユリウスがまた所用で出払った後カイルに聞いてみた。


「王妃様はどんな方だ?」


「そうだな。でしゃばらない方かな。この国の侯爵家の令嬢で国王に望まれて嫁がれたが偉ぶらないと方という評判だな」


「女官長がここまでのさばる様になったのはどうしてだろう」


「それはわからない。とにかく何をしたくて勝手なことをしているのか探る必要があるのは確かだ。そういやこの情報を持って来てくれた女官はユリウス様に聞いたがミケーレ嬢の友達らしいな」


「お茶会で知り合って家の窮状を救ってもらったからと大層思い入れがあるようだったが」


「万が一ということもある。その女官の周囲も調べておくよ」


 カイルはしっかりしてるなぁと感心したが自分もそのぐらいしなくてはと反省するジークハルトであった。恋愛はしばらくいいや。どうせ振られる……

 

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