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 ジークハルトは落胆と希望を抱えて帰邸した。


「ぼっちゃま、

ー魂抜けてますが、大丈夫ですか?」


 侍女長のニーナがジークハルトの帰邸を迎えて声を掛けた。うーん 失恋はしたけれど、側近補助と言う栄誉を貰った。でも自分が役に立つか不安なのであまり口外すまいとせっかく心配してもらえたけれど、あいまいに笑って誤魔化した。


 父が帰宅してから執務室に呼ばれた。父はジークハルトを呼び寄せて真剣な目をして言った。


「王太子殿下の側近の補助の話受けたそうだな。生半可な覚悟では務まらないから性根を据えてやれよ。王太子殿下の執務室では機密事項だらけだ。面会を求めて来た人間の素性すら漏らしてはいけない。そんな基本的な事はきっと説明はない。お前は一から説明しないととんでもない誤解するからな。よく覚えておくように」


 あー婚約者との顔合わせと婚約者候補との見合いを間違えた事忘れて貰えないらしい……やれやれ。


 次の日カイルが訪ねて来た。


「やあ 同僚 元気かい?真実の愛の破綻から立ち直ったかい?」


「立ち直ったよ」


「そりゃよかった。もうすぐ王宮から任命書が来るらしい」


「そう言えばカイル、私が側近の補助をお受けしたのは昨日なのに昨日の今日でなぜ知ってる?」


「機密だよ。王太子殿下の執務室には秘密が一杯だ」


 くすくす笑い出すカイル。なんだかからかわれてる。ちょっとムッとしてカイルに言った。


「父にも念を押された。機密事項で一杯だから性根を据えてやれと」


 カイルもそれを聞いて真面目な顔に戻った。


「確かに閣下の言われた通りだ。私達の前に伯爵家の令息が一人推薦があって側近に入ったのだが、機密を自分の親に漏らしてその親は利益がでる様に立ち回った。ユリウス様の調べで直ぐわかって、家は改易。本人達は国外追放になったよ。結構悪質な手口だったらしいから」


「なるほど、親にも漏らすなと言う事か」


「そうだ。何を言って利用されるかわからないからな。一応実務に入る前に誓約書は出す事になってる。ここで見聞きした事は誰にも漏らさないってさ。初日は二人一緒に行く事になるらしい。よろしくな」


「ああ こちらこそ」


「ところでさ」


 カイルはニヤリと笑った。


「就任早々に下働きは忙しくなるそうだから覚悟しておいたほうがいい」


 なんのことだかわからないまま、王宮から任命書が届き出仕の日がやって来た。

 朝から身だしなみをちゃんとしろとニーナがうるさく周りを飛び回ってる。


「それでは色が合いません!こちらにしてくださいませ」


 ニーナ…これから週に三日は出仕するのだからいつもめかしこむ必要はないよ。それにお見合いでもないんだけど。


「見合いじゃないよ」


「何言ってるのです!王宮は色んな令嬢方が出入りします。どこでお目に止まるかわかりません!」


 見染められろと……普通反対じゃ。

 それでもニーナの検問を潜り抜けてなんとか馬車で出仕にたどり着いた。

 王宮の門で通行許可証を見せて、王太子殿下の執務室のある東宮に向かった。途中でカイルと合流して指定された時間に執務室に入った。ユリウスが待っていてくれて、誓約書の説明をしてくれて記名を求められた。それ以外にも王宮の決まりの説明を受けた。


「来て直ぐに悪いが、王太子殿下が婚姻される。半年後だ」


 びっくりしてジークハルトがユリウスに尋ねた。


「お尋ねしますが、王族の婚姻は公示されて一年後が普通では?」


「これは王太子殿下のゴリ押しだ。陛下もあの某王女がまだ諦めてないのを知って半年後の挙式を認めた」


「殿下は婚約されてませんでしたね?お相手は?」


 ユリウスがホッとため息をついた。


「私の妹。ミケーレだ」


 つんとカイルがジークハルトの脇腹を肘で突いた。


「ジークハルトにも迷惑をかけたが、やっとミケーレが殿下の懇願に頷いた。婚約期間が半年などと前代未聞だが、父親の庇護を失った某王女が捨てた伯爵令息とよりを戻そうとしたら、すでに伯爵令息は元の婚約者と婚姻をしていた。それで自分の取り巻きを動かして、殿下に再び言い寄ろうとした。本当に迷惑至極な某王女で」


 ユリウスは肩を自分の手で揉んでいた。


「そんなわけで来週内々で婚約式だ。怒涛の様に仕事があるのでよろしく」


 ジークハルトは予測はしていたので失恋でもそんなに落ち込まなかった。それより婚約式の招待状に始まり会場の手配、結婚式の招待客の手配。将来の国王の結婚式なので国外の賓客も招くと言うことで宿泊の手配。目の回る様な毎日が始まった。そんなわけでニーナの令嬢方に見染められて来い!は実行できなかった。週に三日の予定が結婚式が近づくと王宮に泊まり込みが普通だった。成る程これが過労死予備軍かと納得したジークハルトであった。


 時たまミケーレが執務室の差し入れに来てくれるが、その姿が現れると王太子が攫う様にどこかに連れて行ってしまう。残された甘い菓子を側近達で噛み締めるのだった。あーあ自分も春を迎えたいと思うジークハルト。ん?カイルには恋人がいた……

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