表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/24

11



 垂れ下がって来ている小枝を避けて歩み寄って来たのはミケーレだった。


「まあ ジークハルト様 二度とお目にかからないと思ったのに結構早くお目にかかりましたね」


「ミケーレ嬢 先日は大変失礼した。申し訳ない……」


「お前 殿下はどうした」


 また言いかけでユリウスに言葉を遮られた。


 ミケーレはつんと顔を逸らして言った。


「言い訳がましい殿方は好まないと置いて来ました」


 ミケーレはジークハルトに向き直った。


「ジークハルト様 侯爵夫人にもお伝えしましたが、ジークハルト様が辞退されたと言うことでお終いです。お手紙も頂きましたしお気になさらないで」


 ミケーレはちらりとレオを見てから言葉を続けた。


「真実の愛に破れて終われたそうですし傷心の方をそんなに責めませんわ」


 これは、彼女も女装男子に騙された事を知ってる。ジークハルトは自分の恋心にひびが入った音を聞いた。ユリウスがコホンと咳払いをした。


「今日来てもらったのは、謝罪だけでなくお願いがある。ああ 私から話そうと思ったが本人がいらっしゃったから。ミケーレ逃げるな」


 バタバタと数人が走ってくる音がした。ふと見ると近衛を引き連れたこの国の王太子殿下だった。なぜ!


「殿下 こちらです」


 ユリウスが手招きをした。王太子殿下はこちらを見つけて歩み寄られた。ジークハルトは控えようとしたが、ユリウスに座るように言われた座り直した。


「ここは公的な場所じゃないから座って。君のお陰で私は助かったよ」


 なんのことかはわからないけれど、王太子殿下にお礼を言われてしまった。


「ユリウスから聞いたか?」


「これからでした」


 ユリウスが代わって答えた。


「そうか ジークハルト・ブリーゲル これは強制ではない。ユリウスの負担を減らすため私の側近を増やしてる。君は伯爵位を継承するため準備中なのだから毎日とは言わない。週に三日ぐらいで良いので手伝ってくれないか?」


 王太子がミケーレが座ってる側のベンチに座りながら言った。ジークハルトは急な話の展開についていけない。


「恐れながら申し上げます。なぜ私なのでしょうか」


 王太子はジークハルトを見てニヤリとした。


「君は私の恩人だからな……と言うのは冗談だが、ミケーレから今時見ない純情一本槍だから鍛えれば……と推薦があった」


 えっと思いミケーレを見るとミケーレは気まずげに目を逸らした。


「側近に取り立てて欲しいと言っていません。ただ阿諛追従の人が多い中真っ直ぐに自分の言い分を言うところは珍しい人物だと言っただけです」


 ユリウスが言葉を挟む。


「ブリーゲル侯爵閣下からは了解を得てます。本人が望めばいい勉強になると言われていました。それに先程スラム街の問題に言及していただろう?殿下は少しずつ貧困問題にメスを入れたいと思われている。そのためには国を富ます必要もある。長い道のりだが参加しないか?」


 ジークハルトは領地のことは考えていたが、その上の国に付いて真面目に考えた事は無かった。自分がそういう事に参加出来る…凄いことではないか。ここで発奮しなければ真実の愛に狂った男でお終いだ。


「はい 何が出来るかわかりませんがやらせて下さい」


 ユリウスがニヤリと笑った。


「殿下の前で言った事だ。もう取り消せない。あーやれやれ過労死する前に人が増えて良かった」


 過労死そんなに多忙なのか……いや 早まったか?


「君の他にカイル・ブリューゲル伯爵令息も参加する」


 カイルなら情報通だし納得だと思った。


「カイルとは友人だそうだが、馴れ合わずにやってくれ。後日家の方に任命書を出すから」


 王太子殿下はそう言って立ち上がり、ミケーレの手を握って無理矢理連れて行った。その後ろには怒涛の様に近衛が付いて行った。ミケーレはどう言う立場なのだろうと思っていたら、疑問が顔に出ていたのだろうユリウスが声を掛けて来た。


「まあ 痴話喧嘩だ。だから君が見合いを断ってくれて助かったよ」


「え どう言う意味ですか?」


「国をあげてのお祭りの創国祭に来賓として来た某国の某王女が舞踏会で殿下に一目惚れしてね。婚約者がいないのなら自分がーとゴリ押しして来たのだよ。某国ではまだ政略結婚が主流で某王女にも婚約者がいたにもかかわらずだ。当然殿下は断られたけれど、某王女は婚約破棄をしたそうだ。その相手も某王女が婚約者のいる伯爵令息に惚れ込んで無理矢理元婚約者と別れさせて婚約した相手だったのにだ。そんな我儘放題の王女など迎え入れはできないので、断ったが某国の某国王は無能だったので娘の言いなりだ。退けるのに苦労したよ」


 よく見ると美貌の顔にくっきり隈がある。お疲れの様で。そういえば最近さる国で国王が病没して王太子が即位したなーと思った。


「その某王女がこの国に留まって好き勝手してる間にミケーレが殿下と距離を置いてしまって、ミケーレが婚約者を探すと言い出した時は殿下の目の色が変わってね。苦労したよ。最初の見合い相手だった君が真実の愛持ちで本当に助かった」


 お役に立ってよかったです……でもまた好意を抱いた相手に失恋です…


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ジークハルトに同情出来ない。叩き上げられて行け
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ