【第一回目から魔王倒されるってマ?:part6】
血に濡れた真桜さんは、ただ声を震わせ告げる。
「あなた・・・正気??」
「おまいうッ!!」
「佐々木、ちょっと黙って」
「鈴木ッ!!」
困惑のあまり、動揺しそれはそれはガっと目がとても開いていた。
赤く染まり、あまり表情が伝わりづらくも、声は違う。
今までの読みづらい、声ではなく、完全になにかどうしていいかわからないと。
そんな感じを思わせる。
俺はそんな真桜さんに説明せざる負えない。
「いやあの・・・好きってのはその・・・つまり」
「魔王を苦しませ、殺すことになんら抵抗を覚えなかった残酷極まりない女が、血の雨を降らせる狂人を見てあなた正気なのッ!?」
「真桜ちゃんまともな神経してないのに、いざ自分を好きな人いると素直に認められなくなるのなんなん・・・」
俺の体をグラグラとゆらしてめっちゃ確認してくる真桜さん。
それに対して、俺はただただ細々答える。
そして答える俺を真剣に見る真桜さん。
「そのまあ、確かに血と肉を求める人っていうのは普通の考えからは大分ずれているんだろうけど・・・なんていうか、かっけぇんすよ・・・姐さん」
「あ、姐さん・・・?」
「姐さんのその自分を貫く姿勢は男の見せる勇ましさよりも勇ましく、可憐な姿はどんな美しい花よりも最高で輝いていて、こんな自分を大切にして生きている人も他にいない、バイオレンスというアクセサリーがより一層貴方の良さを引き立て、俺は感動しました」
「・・・」
恥ずかしくも頑張って思っていることをしっかり伝えた。
むずがゆく、言えば言うほど恥ずかしさが増し、その度頭をかいていた。
嫌われても構わない、気持ち悪いと思われても構わない。
本人にどう伝えるか、好きと言ったならば伝える。
姐さんはなんか硬直して、言葉が帰って来てないけど。
「あ、姐さん・・・?」
「(あまりの真っすぐすぎる思いに驚愕しているのでは・・・)」
と、その時。
ダバァッ!!
俺はなにかに押し付けられる様に畳に勢いよく叩きつけられる。
一瞬のことでなにが起こったのかわからず、よく状況を見て見ると。
俺は姐さんに抱きつかれ床に押し付けられていた。
「あ・・・姐さん」
「(そうはならんやろ!)」
この状況になってしまったのはどういうことなのか?
俺がドキドキしながら返答を待っていた時、ゆっくりと口を開き耳元で囁かれる。
「・・・あなたも魔王ちゃんみたいになりたいの?」
「うぇ?」
「好きだ好きだ言われても私の心にはなにも響かない、ただ、もし本当に好きなら私に心臓捧げる気はある?」
「心臓・・・」
俺の体に手を当てて、背中から心臓の位置に手をさする。
耳元に響くいやらしくも恐怖させるような言葉。
ただ、俺は好きな人に抱きつかれ、耳元でささやかれ顔は真っ赤だったので恐怖はそれほど感じなかったが、普通の人なら恐怖モノなんだろう。
俺は姐さんの言葉をただ耳で聞く。
「私はね、血を見るのが好き、人の肉を見るのが好き、殺伐とした脳内とあふれ出る狂気が私を抑えきることができない、だからもし本当に好きだと言うのなら・・・貴方も私に殺される覚悟があるってことよね?」
姐さんの言葉に対して、俺はこう返す。
「まあ・・・好きな人に殺されるのなら・・・それでいいかな」
「ッ!??」
瞬間、姐さんは立ち上がり、後ろへ後ろへと下がっていく。
立ち上がった姐さんを見た時、困惑が限界に達してその顔は沸騰したやかんの様。
顔は真っ赤、睨み、状況が理解できない、そんな感情を思わせる。
そして、真桜さんは混乱の最中に眠っていた荒い一言を放つ。
「気持ち悪いッッ!!」
「えっ?」
き、気持ち悪い・・・だけど確かにその通りなのかもしれない。
姐さんを好きだと言うあまり、殺されてもいいというのは普通の声じゃない。
これは完全に選択しを間違えてしまったか・・・?
ただ、本当に好きな人に殺されても悔いはなかったから答えただけだったが。
どうやら正直に答えるだけでは全くだめらしい。
「(俺は勇者と真桜ちゃんの何を見せられているの?)」
「お話のところもうしわけありませぬかしら!!」
「なッ!?」
佐々木が突然大声に対して驚きその声の主の方を見たら・・・。
「魔王ちゃんかしら!!」
やっぱり魔王だった、なんとなくアホっぽい声の響きがそう感じた。
「なに、そのふざけたしゃべり方は・・・邪神ちゃん〇に対する対抗意識?」
「姐さん、せめてタイトル伏せて」
「そうかしら!私は誓った・・・この現代で勇者がいるということはこの現代でリベンジができるということ!リベンジができるということはリベンジできるということかしら!」
「同じことを2回言うな」
「見よ!この体、心臓部はすでに復活し、お前達を叩きのめす準備は万全、私を異世界で滅多打ちにした勇者、現代で私が不死身なことを良いことに合法的に殺戮を楽しみ真桜!!・・・さん」
なんで2回も殺されたくないからさん付けは忘れないんだよ。
「今すぐこの場でくたばってもらいますかしら!!」
「(あ、俺は入ってないのか・・・がっくしなのだ)」
そこを残念と思うあたりえ~と、マゾ・・・。
佐々木、そこは普通はよかったと思うところなんだぞ。
「お前、なんで人の頭のことがわかるんだ・・・」
「台本に書いてあった」
「メタい」
「くだらない漫才してないで、魔王ちゃんこっちに仕掛けて来るわよ」
たしかに今の魔王は完全に心臓を復活させて、こちらへの攻撃が可能になった。
飛び上がり、右手をおもっいきり殴りかかるポーズを決め・・・そのまま回転する!!
「うおおお!くらえぇぇーッ!これが魔王ちゃんの呼吸壱の型!!魔王ハゼット!!某ザルキーパーが使うバーニングキャッチとは比べ物にならず私はちゃんと回転を生かして戦うのだ!!死ねぃ!魔王ちゃん現代リベンジはここで打ち切り!作者が前夜寝不足ですぐに寝て十時間以上の睡眠をとってしまい大幅に更新が遅れて来た礼としてここで打ち切りにしてさしあげますかしら!!くたばれぇぇ!!」
ズドォォォンッッ!
床にその拳は埋め込まれ、辺り一帯に巨大な煙が舞う。
「えっ、あれ、プロット通りならここで誰かに当たって終わるって書いてあるんだけど、なんで誰にもあたってないのかしら?」
「魔王ちゃん、さっきみんなが台本に書いてあったって言ってたでしょ?」
「ま、まさか・・・ッ!?」
不敵に笑う真桜さんが放つ一言・・・それは・・・」
「今日のここまでの流れは全部みんなわかってたのよ」
「オゲェェェェェッ!!」
まあ、そうだろうな、ここまでの流れがわかってんなら普通当たらないよな。
ていうか、セリフ長すぎて攻撃が当たらんが。
「・・・あれ、ということは真桜ちゃんも勇者も出会うこと知ってたし、あのラブコメ展開も必然・・・?」
「アレは違う、何も知らなかった」
「俺もアレは知らない」
「・・・ッ!!(ムセテンナヨ・・・)」
どこからが台本通りでどこからが台本外なのかわからないのもこの小説の凄いところです。
「さて、茶番が終わったからあとはもう一回貴方の心臓ぶち抜きタイムよ・・・」
「ひぇぇぇぇ!い、嫌じゃあ!もう私は死にとうない!助けろ!誰か私を助けろ!私は価値のある魔王なんじゃあ!」
「うふふ・・・嫌がる人の絶望の顔、これから起こる恐怖に怯える様、そして、聞こえてくる心臓の鼓動が・・・私を楽しませてくれる・・・」
魔王、涙を流し悲鳴をあげるも誰も助けない。
そう、誰も助けないのだ。
人のことを殺そうとした罰を受けなくてはならない、それがここの掟ジイ。
「馬鹿め!台本を書いたのは私だ!!油断したな魔城!!」
「なにッ!?」
ガッ!
姐さんの両腕を拘束する者がいる・・・!
あの白い髪型に小さい体・・・!!
「なぜ貴様が起きている!クソ妖精!!ファン!」
「ご主人様はダメだな~!!異世界時代で最後に私がブラボーブラボーしたの忘れたんですか!!?私はファン・イエン!日本語に訳すとその名は嘘!!私は最初から魔王様の忠実な下部なんだよ!!」
「なんと丁寧な説明!!」
「佐々木、この小説ってみんなこうなんだな」
「今更かい!!」
そう言っている間に魔王がまた大きく飛びあがって後ろへ後ろへと下がり。
今度は真っすぐ殴りかかるポーズを決めて、右手を巨大化させる。
「見たか!これが第二の殺人技!ロイヤル・・・じゃなかった魔王ちゃんメガントナックル!!チャージ時間が長い反面非力な私でもトップクラスの殺人技を叩き出せる!!今度こそ決める!3000文字近づいて来て油断した自分のことを呪うが良い!!」
「・・・魔王ちゃん」
絶体絶命の姐さんのピンチ・・・!
俺は思わず何故か近くにあった鉄パイプを持って大急ぎで走り出す!
「佐々木、ちょっと今から人を救ってくる!!」
「お、おう・・・!コンビニ感覚で!?」
俺は飛び上がり振りかぶった鉄パイプを持ちそのまま回転し続ける。
そして、その回転した体を思いっきり魔王の頭にぶつける!!
「鉛天空落としィィィ!!」
ゴォォォンッ!!
「ごべぇッ!?」
コミカルな音な反面、血反吐を吐いて白目をむいて気絶してしまった魔王。
そして俺はそのまま後方の妖精だけを狙うように姐さんの後ろにいる妖精をはたき落とす。
「ムギゃ!!」
「すごい・・・一瞬にして逆転してしまった・・・さすが勇者」
「佐々木、言ったろ・・・俺は異世界クリア帰りだってな」
と、その時。
「おーのーれぇぇぇ・・・魔王に2度もその技をぶちかますとは!!許せないかしら!」
「まだ生きてたのね」
頭から血をドバドバと出してもはや瀕死の魔王。
死なないけど。
「お前らを決して生かしておくわけにはいかないかしら!私の最強奥義・・・リベンジ」
「その前にちょっと言いたいことがあるのだけどいい?」
「えっ?はいどうぞ・・・」
突然何か言いだそうとする姐さんに困惑しながらも素直に受け入れる。
「この小説ね、よくよく考えたらオチと基盤になってるストーリーを合わせると2つタイトルがないとおかしいのよ」
「は、はあ・・・」
「だからね、決めたのよ、この小説のメインタイトルは2つ必要だってね」
「は、はぁぁぁぁぁ!!?」
突然の宣告に動揺する魔王。
それもそうだろう、だってそんなことしたら。
魔王だけが主役のタイトルではなくなってしまうのだから・・・。
「さて、言いたいことは言ったしそろそろ」
「そんなことさせてたまるか!やっぱり今日が最終回だボケェェェ!」
最後の力を振り絞り全力で殴り掛かって来た魔王に対して姐さんは!!
「あの世までふっ飛べェェェェェエッ!!」
ボゴォォォォ!!
綺麗なアッパーがさく裂してこの部屋の天井をすべて壊して天然プラネタリウムを作り上げてしまった姐さん・・・。
今日の夜空は、今一つの星が加わって、なんて綺麗な夜空なんだろう。
「・・・アイツ、天国にいけるのかな」
「さあ、というか次回までに戻って来れるのか?」
佐々木とくだらない心配を2分くらい考えたが、すぐにどうでもよくなった。
「・・・さて、片付いたから私はもう寝るわね」
「真桜ちゃん、自由だな~・・・」
こんなことがあっても自分のやりたいことを変えない。
常に自分の信じている道を進む、そして恐れない心。
ああ、なんて・・・かっこよく、かわいいく、そして・・・美しい人なんだろう。
「姐さん!!」
「・・・?」
俺は自分の部屋に戻ろうとする姐さんを思わず呼び止める。
俺はこちらを振り向いた姐さんに勇気を振り絞って言う。
「また、ごはん一緒に食べましょう!!」
その一言を聞いた姐さんは再び自分の部屋の方へと足を運びただ一言残す。
「・・・気が向いたらね」
異世界を救った世界で、何の変りもない日常を過ごす日々が続いた時。
こんなに人のことを好きになったりは初めてだった。
これは、そんな物語なのかしもしれない。