【人なんて大っ嫌い:part6】
殴り飛ばされた男は無事、ビルにも幸い人がいなかった為被害者0人。
小説のアクセス初動は2と、無事に事件は収束に向かっている。
パトカーが何台も到着し、犯人を乗せていた時、凛々しい顔立ちに。
長い髪の毛にふんわりとした白い髪の毛、おでこを見せ。
スーツが似合っている女性が一人、英司と話していた。
「いや~りっちゃん遅いで、ホンマ、一般人の協力得なかったら犯人どうしようもなかったで」
「その、乱れた方言っぽいモドキのようなしゃべりは相変わらずか、無能天パ野郎」
「なっはっはっはっ!相変わらず口が達者でええな、りっちゃん」
なんだ、この二人は・・・。
ある程度、2人で会話していると。
俺に向かってりっちゃんと言われていた女性がこちらへ話しかけて来た。
「自己紹介が遅れてすまない、私は如月律子、コイツと同じく対特殊事件捜査課-JCB-だ、日本のあらゆる特殊な極悪人達を任されている」
「は、はあ・・・(その割には今回一般的な悪人だったような)」
律子さんは髪をふぁさと仕草をし、再び凛々しい顔して話す。
「君が逮捕に協力してくれた勇者・・・そしてその角が生えているのが魔王?」
「はい、信じてはもらえないとは思いますが」
「いや、信じるさ、その角と君の勇気を称えてね」
「は、はあ・・・」
なんだかこっちの人もあんまり読めない人だな。
この街に住む人はだいたいこんな感じなのか?
「さて、犯人を連れていくと同時に君たちも病院に連れて行かなくてはならない、それに事情聴取もな」
「ああ、やっぱり」
「まあ、私は別に構わんぞ、警察に協力してやらんこともない」
「なんで上から目線なんだよ、魔王」
「魔王だし」
事件の後だって言うのにコイツはいつも通りのテンションでついていけん。
「りっちゃんは堅苦しいのう、仕事、仕事、そんな仕事に忠実やと自分を通せなくなるで」
「警察とは政府の犬、だったら仕事に忠義なのは当たり前だろ」
それにしても同じ部署で、冷静にただ返す律子さんと。
ラフにフレンドリーに返す自由人な英司さんで大分落差があるが。
本当にこの警察は大丈夫なんだろうか。
「ま、とりあえずついていくしかないよな、いくぞ魔王」
「あいー」
「ちょっと」
と、俺達が警察の車へ向かっていた途中のこと。
姐さんが俺達を呼び止めた。
「・・・少しだけ話いいかしら」
「あー・・・えっと」
俺は思わず律子さんと英司さんの方へと目線を向けた。
「少しくらいならかまへんよ」
「先に車で待っている」
「ありがとうございます」
「私はさきに車に入ってるぞ」
この場にいるのは俺と姐さんだけになった。
姐さんは真っすぐこちらを見て、声を出した。
「どうしてあんな無茶したの?見知らぬ人に守る価値はあった?」
「どうしてと言われても・・・価値がどうのこうのじゃないと思うんですよ、人を守るって、たとえその人がクズだったとしてもボクは守っていたと思います」
「なんで?どこのだれかわからない人も、犯罪を犯す人も、これから裏切るかもしれない人も、みんなみんな・・・結局他人じゃない、他人にどうしてそんなに価値をかけられるの!?」
姐さん、やっぱり人が苦手なんだろうか。
好きと言うのは俺の思い込みか、特に理由はなく、ただ単に理解できなかっただけか。
あの時の怒りは・・・。
「姐さん、姐さんは人が嫌いですか?」
この問いに対して、姐さんは少し間を開けて静かに怒りを露わにした。
「・・・大嫌い」
「・・・」
「大っっっっ嫌いッ!!人なんて、自分のことしか考えてなくて、信じても信じても内心何考えてるか分かんないし、怖い、ただ怖い存在じゃない、身勝手で、傲慢で、貪欲で、愚かで醜い、私を含めた人間全員が・・・そうじゃない」
そうなのかもしれない。
姐さんの言う通り、ただ勝手に生きて、ただ自由に生きる。
他人のことなんて知らない、他人の気持ちを勝手に思って行動する人もいる。
互いを理解できず、結局自分の都合のいいように世の中が動いていないと納得できない。
この世に生まれて来るべきではなかった、そんな生き物なんだろう。
「貴方も・・・」
「?」
「貴方も・・・偽善でいい人気取りたいだけなんでしょ?」
「・・・」
睨み、冷たく鋭い瞳の姐さんにただこう言う。
「それは・・・否定できないです、俺が善行をするのも、誰の命も絶たないのも、それが良い人間だからとか、良い勇者だとかの、ただの偽善です」
「・・・やっぱりね、人間なんてそんなもんよ、私の為だとか、みんなの為だとか結局嘘、自分をカッコつけたいための飾りでしかないのよ、善行なんて」
「それでも、人を守りたい気持ちは本物だと思ってます」
「ッ!?」
「人を守りたい気持ち、命を大切にしたい気持ちは、心の底からあります、俺はまだ未熟だから、守りたい人や命を選ぶ節はある、それでも、どんな醜い命もこの手で守ってきました、喧嘩することも、戦ってけがをさせたこともあるけど、絶った命は一つもない」
俺の意思も、眼も迷いはなかった、ただ思っている気持ちを言葉に出した。
震える声と眼、姐さんは俺に声を荒げて言い放つ。
「それで・・・それがなんだってのよ!貴方はそうまでしてなにがしたいの?私はね、そういう嘘つきを何人も見て来たの!もうこれ以上誰も信用したくない、関わりたくない、信用して、もしまた裏切られたり、本当の私をどんどん知るうちに嫌われていくもたまったもんじゃない・・・!」
「だから、信用したくない、仲良くなりたくないんですか?」
「口でなんとでも言える人間、都合が悪くなればすぐに自己防衛に走る人間を・・・どうやって信じればいいんだッ!!」
姐さんはただ怒りをぶつけた、俺に、裏切れる気持ち。
信じられない悲しみ、姐さんのすべてを語るように。
俺はただ聞いた、姐さんの気持ちのすべてを。
「分かんないの!?私は人と関わりたくないの!!友達なんていらないし、男なんてもっといらない!!私は人を信用しない!!どれほど優しくされても、私は仲良くなるのが怖い!!貴方もいつか私を裏切る!!」
目に光はない、きっと心は閉ざされていた。
「それなのに私に近寄ってくる理由はなに!?」
そんな真桜さんに、俺は・・・ただ一言告げた。
「・・・好きだから、それだけです」
「ッ!?」
その一言に、姐さんは口を開けて、ただ黙り込んでしまった。
「貴方が俺のことを好きじゃないのは知ってます、けど、俺はどんなに嫌われていても貴方のことが好きです」
「え・・・あ・・・」
「信じてもらえないなら、今は信じないでください」
「・・・」
俺は唖然としていた姐さんにただ真剣に伝えた。
「これから起きることにどれだけ巻き込まれても、俺は気にしない、貴方がどれだけ残酷な人でも俺はそこが好きだ、周りからは狂っているとか言われても、俺にとって最高にカッコよくてクールで可愛いく美しいのはアンタなんだよ!」
「・・・ッ」
「貴方の全部が俺は大好きだァッ!!」
その言葉に姐さんはいつもの読みづらいあの素の表情へと変わっていた。
その顔を見て、思いをすべて吐き出し全力に感情的だった俺は微笑み言う。
「だから、受け止めてみせますよ、貴方の全部」
「・・・」
「いつか、貴方に信じてもらえるようにいっぱい努力します」
その言葉を聞いて、姐さんは言葉を再び言いだし始めた。
「・・・人なんて大嫌い」
「・・・」
「じゃあね、勇者さん」
その言葉を言い放った後、静かに背を見せてこの場を去っていく。
やはり、こんな感情論はなにも刺さりはしなかっだろうか。
「・・・また、ご飯食べましょう」
「・・・ッ!!姐さん!!」
その後ろ姿からはどんな顔をしていたか全く分からなかった。
けれど、俺はその言葉を聞いて、嬉しく、心が温かくなった。
また、姐さんとご飯が食べれるかもしれない。
そんな日を考えて、俺もパトカーへと向かう。
「(変な人・・・でも、悪くないわね)」




