偏食の小さな友だち
ある日、近所の中華料理屋さんで、ごはんを食べることになった。いつ前を通っても、そこまで賑わっていないお店である。それでも、一応、予約の電話をすることにした。
ープルルルル…。ガチャッ…。
電話は通じた。ただ、日本語が通じなかった。仕方ないので、中国語で予約を完了させた。
中国語で、「いい?」と確認したい時は、「OK?」と言う。日本語の「ぉk?」と同じ発音だと思う。とっても早口で言う…みたいな感じ。
お店は、ひまだったらしい。
「予約の日も時間も、まじでいつでもいい。
あと、何人でも可。なんなら、今からでもいい。
どうする?」
と言ってくれた(笑)
いや、うん、今から…は、こっちが集まれないんだ(笑)あの…ホントありがとうございます(笑)
OKの連発。愉快な電話であった。
予約しておきながら、私は食に無頓着な人間だ。店員さん。すまん、許せ。
なんでって、まず、『咀嚼する体力』がないのだ。よって、もっと色々食べたい…という願望が生まれない。
また、美味しそうな物や記事を見るだけで、食欲が満たされてしまうタイプだ。
単純に、時間がないというのもあるかもしれない。特に仕事の日は、お昼ごはんの時間が上手く確保できない。
かと思えば、周りにはきちんとお弁当を注文したり、買ったり、持ってきたりして、食べている同僚もいる。…ということは、私の要領が悪いのか。
でも、食に貪欲でない真の理由は、
①死んじゃうのかなって目に遭ったこと。
②周りに死が溢れていたこと。
これらが大きい気がしている。
「もし、あと何回かしか、ごはんが食べられないのなら…?
なんとなく物を食べるのは、もうやめよう。
食べたいもの、栄養があるもの、食べてよかったと思えるものを、必要な時に必要な分だけ食べよう。」
と、真剣に心に刻んでしまった気がしている。
『真剣さを捨てれば、楽に生きていける。』
とある小説に、こう書いてあった。この言葉は、私は、真理だと思っている。
ーお腹がいっぱいになるのなら、本当に心や体が必要と思うものを摂取しよう。
そう、どこかで、『真剣』に決意してしまった…?
しかし、上のものを含め、この世にある真理の全部をぶっ飛ばして、もはや「なんで生きてるの?」と恐怖すら覚える存在がいる。エーちゃんである。エーちゃんは、すごい男の子だ。
何がすごいって、彼は、基本的にチョコレートしか食べない。いや、ホント…!
最後に会えたのが3年くらい前だが、記憶にある限り、私の見たエーちゃんは、ほぼチョコしか食べていない。もしくは、アイス…?
3年前は、まだ幼稚園児だった。体は小さくて華奢だった。お肌は真っ白で、髪の毛が真っ黒だった。少し人見知りだった。仲良くなると、たくさんおしゃべりしてくれて、とてもかわいかった。
かわいいんだけど、彼は、チョコばっかり食べていた。それも少し食べて、お腹いっぱいと言っていた。
(え? 大丈夫…? )
私は不安に駆られた。
(もしかして、この子の体、チョコでできてる…!? )
エーちゃんのハテナなところは、たこ焼きパーティーで大々的に披露された。彼は、たこ焼きではなく、やはり、チョコを食べた。なんでだよ。
私は、このままでは、エーちゃんの脳みそ(も)チョコレートになっちゃうのではと心配した。
結論、全然そうはなっていないんだ、これが…!!
実は、エーちゃんは、出会った時、すでにスーパー幼稚園児だった。10回以上連続で神経衰弱のカードを当てたり、地理や科学技術に興味を持って自ら学んだり…。興味の範囲と知識理解のレベルがパない子だった。語彙も豊富だった。
私の説明力が低くて、伝えられないのが悔しい。ただ、断言できる。彼は、子どもという枠に、全然はまらない。間違いない。見た目は子どもで、頭脳が博士。ぶっちゃけ、賢すぎた。
おおらかで優しい、人格者のご両親が、彼に愛を与え、好きなだけ学ばせた。何かを教える時はきっちり教えて、危ないことは理由も同時にちゃんと説明していた。その上で、エーちゃんに判断させていた。
遊ぶ時は、博物館と同じくらい、釣りや川遊び、キャンプなどにも行っていた。エーちゃんは、自分の目で見て、手で触って、学習をして、伸び伸び育っていったようだ。
最新の情報だと、将棋をやっているらしい。あの、フジイくんのやっている将棋を…!?
エーちゃんは、頭が良い上に負けず嫌いの頑張り屋さんなので、極める可能性がある。いつか、プロになって、フジイくんと対決するかもしれん…。
ご家庭で、ちゃんとお野菜や炭水化物、タンパク質も食べていただろうとは思う。一瞬、外食でパスタを食べているのも、見たは見た。
今はもう小学生で、食べられるものも増えたはずだ。お父様にお聞きしても、「…チョコです。」と返ってはくるが、さすがにチョコ味のパンとかは食べているだろう。
エーちゃんは、語学習得もスッとできるタイプの気がする。うちの近所の中華料理屋さんのように、パーッと外国語を話してくれる場所があったとする。おそらく彼は、聞こえたままに覚えるんじゃないか?
会いたいな。
偏食の小さな友だちのお話である。