休日のマックがまさかの進路指導室
駅のマックで、桜餅パイを食べた。美味しかった。食べ終わって間も無く、事件は起きた。ド金髪のチャラ男が話しかけてきた。耳に光るシルバーのピアス。
「あの、スミマセン!コレ、なんですか?!」
彼は、一枚の紙切れを持っていた。履歴書だった。『配偶者以外の扶養家族』の欄を指差していた。
(え、就活中のチャラ男…?!)
私は、人一人の人生が懸かっていることを直感した。え、え…。うっそ…。重い…!…いや、でも、やるしかないやんけ…!!
「えーと、荷物持ってきて。隣、座ってください。」
「あ、ハイッ!(元気)」
就活中の、元気なチャラ男との、突然の、出会い。突如として始まった、進路指導。こうして、マックは、一瞬で、進路指導室と化した。なんでだよォォォ!
『配偶者以外の扶養家族』だけではなくて、チャラ男は全体的に履歴書の書き方が分かっていなかった。『配偶者』、『電話番号』、『緊急連絡先』、全部不明。
致命的だったのは、『現住所』が分かっていなかったこと。はあァァァ?!まじでなんでだよォォォ!!
私は、『配偶者』は結婚相手のこと、『電話番号』は携帯電話で良いけど見てくれがいいように書くこと、『緊急連絡先』は実家でいいことを伝えた。一生懸命、丁寧に履歴書を書く、真面目なチャラ男。
ちなみに、『現住所』は、友だちに電話して教えてもらっていた。良い友だちがいて、良かったねッ!
『○○年』は、元号に統一して書かせた。そこも、自分が生まれた年が分からないというので、私がググって調べた。数字は全て、算用数字で記入させた。
誤字、脱字のチェックもした。志望動機も一応見た。『まあまあ受かる履歴書』は、出来た。よし、いけるぞ…!
だが、ここに来て、証明写真が貼られていないことに気付いた。すでに嫌な予感が漂っていた。一応聞いた。
「えーと、証明写真…ありますか?」
「無いッス!(元気に即答)」
ちょ、おま!しっかりしろよ!ホント!(笑)
「あの、どこで撮れるッスか?!(無邪気)」
(こンの、バッ…!!!!!笑)
幸い、駅ビルに証明写真機があるので、そこを説明した。てゆうか、証明写真機、なんなら、このマックから見えるし。ホント、すぐそこ。だから、そっちを指差して教えた。
「あ、駅の改札のほうッスか!(賢く理解した感)」
「いや、逆だっつの!(笑)改札と真逆の方向!(笑)」
証明写真機は、履歴書サイズだけではなく、パスポートサイズなど、サイズが色々選択できる。サイズだけは絶対に間違うなよと念押しした。
最後に、自分の自己紹介を簡単にした。そして、彼の個人情報は漏洩しないと約束した。でも、はなから、彼は、全く私のことを疑っていなかったと思う。メッチャ素直だったもん。
すでに、内々定はもらっているらしい。履歴書だけ、今日中に先方にお渡ししないといけないとのこと。
私「まず、証明写真撮って!」
チャ「ハイッ!(即答)」
私「先方にお電話して、何時に行けばいいか、聞いて!」
チャ「ハイッ!!(即答)」
私「遅刻しないで!明るく元気に笑顔で挨拶すれば、受かりますから!」
チャ「ハイッ!!!(即答)」
私「頑張ってくださいね!」
チャ「ハイッ!!!!あざした!!!!(元気)」
なに、この、休日出勤感。ガチの進路指導やんけ。
たくさんお客さんがいる中で、チャラ男は、どうして、私に質問してきたんだろう。溢れ出る先生?のオーラでも持ってるんか。はたまた、『添削』から離れられない運命なのか。
とりあえず、チャラ男が無事に内定取れることを祈っている。