胃痛持ちだよ光秀さん 本能寺の変編
「久しぶりじゃの光秀」
「はっ、大殿もご健勝のようで何よりです」
「うむ、まあ、あまり元気ではないのだがな……そこで光秀頼みがある」
「何なりと」
突然だが私明智光秀は転生者である。気づいたら安土桃山時代にいた。幸い尾張近くに転生したので早くに織田信長に仕えメキメキと頭角を現し今では織田四天王筆頭と言われるようになった。そんなある日、大殿から至急登城するよう書状を貰った。いつもの嫌な予感を背に大殿に会い話をし私は言葉を失った。
「殿、今なんと?」
「ん? 聞こえんかったかならもう一度言う……光秀、わしを殺してほしい」
「今」
「くどいぞ」
「では、理由を聞いても……?」
「うむ実は病でな、余命いくばくもないらしい、そこで光秀、わしの足腰が折れる前にわしを殺せ。命令じゃ」
「……」
その日私はどうやって帰ったのか覚えていない。まさか尊敬するあの織田信長が病とは。そして、その病が悪化する前に私に殺されたいとは……どうしたらいい。
大殿には恩がある。飢えや寒さで死ぬかもしれなかったところを助けて頂いた。私の突拍子もない物や策を採用してくれた。素性の怪しい未来知識を持った私を取り立ててくれた。大殿には大恩がある。
その大殿の願い。無下にはできない……でき……ない。
「ときは今あめが下知る五月哉」
『是非もなし』
次回『本能寺の変態』