呪縛
僕の傷は思ったより深く、退院に1ヶ月程かかるらしい。
入院中テレビをみてもどこもあのニュースばかりだ。
「連続首切り殺人鬼再び」
もう嫌になる。
僕はテレビを消す。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「どうした、もう犯人捜しはいいの?」
「うん、もうこれ以上関わるのは危険だからさ」
「そうよね、それがいいよ」
「今日は沙夜もリハビリ?」
「そう、だいぶ手が動くようになったよ」
「よかった、僕もリハビリ頑張らなきゃ」
「南川さん、リハビリの時間ですよ」
「あ、はい。じゃあ沙夜行ってくるね」
「うん、頑張って」
僕は車椅子に乗って看護師につれてかれた。
沙夜は起きっぱなしのスマホを覗いた。
検索ワードはこの村の殺人事件や歴史についてばかりだ。
(やっぱり、まだ事件の事が気になるのね…)
早く、死神から解放されてほしい。
沙夜は兄が寝ていた枕を抱き締めて匂いを嗅いだ。
「頑張ってね、お兄ちゃん」
「あの、ベッドを整えてもいいかしら?」
気づいたら後ろに看護師がいた。
「あ、ごめんなさい。どうぞ」
私は慌てて、ベッドに枕を投げた。
看護師は不思議そうに私を見ていた。
私は黙って病室から出ていった。
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