よかった
「お兄ちゃん」
「大丈夫よ、沙夜、傷はそこまで深くないって」
「いったい誰がお兄ちゃんをこんな目に…許さない」
「落ち着いて、もう大丈夫だから」
「何が大丈夫なのよ」
お母さんは新聞を手渡す。
【高校生通り魔事件、犯人と思われる女性が首を切断されて発見】
「ちょ、ちょっとこれって」
「そうみたい、またあの連続殺人事件みたい」
「でもさ、なんでお兄ちゃんを刺したってわかったのかしら」
「確かにね。警察が発表したらしいけど、記事には詳しく書いてないわ」
「でも、こう言ってはなんだけど、よかった。これでお兄ちゃんが危険な目に合うことはなくなったんだもんね」
「人が亡くなってよかったって言うのも複雑だけどね」
「うっ」
「あ、お兄ちゃんが目を覚ますよ」
「お母さん、看護師さん呼んでくるわ」
僕はゆっくりと目を開けた。
生きてたのか。
「お兄ちゃん!!」
「さ…よ」
大粒の涙を流しながら沙夜が僕の顔を覗き込む。
「よかった、よかったよぉ」
「…さ…よ。ごめんな、退院祝い」
「もう、そんなのいいの。お兄ちゃんが無事なら」
「沙夜、ありがとうな」
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