母への疑問
「ただいま」
「お帰りなさい、瑛人」
「先に病院を出た割には遅かったじゃない」
「うん、途中で管理人さんに会ってちょっと立ち話してたからさ」
「あら、いつの間に社交的になったのね」
「いつまでも子供扱いしないでよ」
「今、ご飯作ってるから待っててね」
僕は自分の部屋に入って、安田刑事が残した写真を再度みる。
この写真に写ってる子は母さんじゃないと言っていたけど、みればみるほど母さんにしか見えない。
僕は今まで起きた事件の被害者の共通点を考えてみた。
年齢も性別もバラバラ…親戚同士でも顔馴染みでもない。父さんに至っては引っ越しの初日に殺されている。
「瑛人、ご飯できたわよ」
僕は食卓に座った。
「ねえ、母さん。母さんの両親てどんな人だったの?」
「どうしたの?急に」
「いや、深い意味はないよ、ただの興味」
「あなたが小さい頃に話したことがあったけど、私が10歳の時に交通事故で亡くなったわ。お父さんは昔かたぎの頑固者って感じで、怖かったわ。でもその手綱を握ってたのはお母さんだったわね。なんだかんだ二人とも優しかったわよ」
「そうなんだ、母さんは事故に遭わなかったの?」
「私はその時は家に留守番してたの、まさか突然両親が死んじゃうなんて思ってもいなかったわ」
「そのあと母さんはどうしたの?」
「親戚もいなくてね。児童施設に入ったわ」
「それ初耳だ」
「そうだったかしら?でもね。いい施設だった。ちゃんと自立することもできて、社会人になって、お父さんと出会って…」
母さんは涙を浮かべる。
「ごめんなさい、頭は治ってきたけどやっぱり辛いわね」
「僕の方こそごめん」
「瑛人、あなたはお父さんの分まで強く生きるのよ」
「うん、約束するよ」
食事を終えて僕は部屋に入る。
児童施設…はじめて聞いたな。
そして、両親の事故死。母さんが10の頃だから、30年前か…
母さんの言うことは特に違和感はない。でもやっぱり疑ってしまう。30年前の交通事故なんてそんな記事残ってる分けないよな…
僕はスマホでそれらしき検索ワードを入れるが出てくるわけもない。事故現場がどこかもわからないし、30年前の事故だ。無理に決まってる。
僕は携帯を置いて、そのまま眠りについてしまった。
翌日、惨劇が起きることを知らずに…
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