71/178
疑念
オペ室から先生が出てきた。
「先生、沙夜は、沙夜は」
「落ち着いてください。命に別状はありません、ただ」
「ただ、なんですか?」
「手の火傷や損傷が激しいので後遺症が残るかもしれません」
「何とかしてください」
「もちろん、最善はつくしますから、お兄さんも少し落ち着いた方がいいですよ」
先生が優しく諭す。
「命に別状がなくてひとまず安心したね」
後ろから刑事が声をかけてきた。
えっと、どうしてもこの刑事の名前を覚えられない。
「さてと、取り調べ見たいでわるいんだけど、あのスマホはどこで手に入れたんだい?」
「公園で拾いました」
「そんな偶然信じると思うかい?」
「そんな偶然が起きたんですよ」
「公園っていうとあの日、君が妹さんともめてた時ってことだね、なんでそのスマホを警察に出さなかったんだ?」
「気が動転してて忘れてました」
ふぅと刑事はため息をつく。
「まぁ、今日はこのくらいで止めとこう。妹さんについていてあげてくれ」
刑事は帰っていった。
沙夜、僕があの時スマホを沙夜に渡さなければこんなことにはならなかった。
ちくしょう、なんで、なんで【沙夜】なんだ…