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暗雲
ガチャリ、玄関のドアが開く。
帰ってきた…
私は急いでスマホを隠した。
「ただいま」
「おかえり」
お兄ちゃんはそのまま部屋に入ってしまった。
「何にもなしか…」
壊れた兄と母…
なんて居心地の悪い家なのだろう。
しかし、このスマホをどうするか。暗証番号…
生年月日?
いや私はあの子と交流がなかったから誕生日なんて知らないし…
もう、いいや。私はスマホをゴミ箱にそのまま捨てる。
ご飯はどうしよう。
作ってもあのふたりは食べないだろうし。
コンビニでも行こう。
私は出かけた。
コンビニ弁当を適当に買い込んで帰った。
私は気づかなかった。
捨てたはずのスマホがなくなっているのを。
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