涙
僕はふらふらとあてもなく歩いた。
救急車やパトカーのサイレンが聞こえる。
僕が喫茶店に誘わなければ、彼女はあんな事故に巻き込まれなかったんだ…僕が殺したんだ…
掴みかけた幸せはあっさりと消えてしまった。
僕は歩き続ける、あてもなく…
「おやおや、どうしたんだ、元気がなさそうだな」
僕は顔を上げる
管理人のおじいさんだ
「もしかして、さっきの事故。知り合いだったのかい?」
僕はまた下をむいて通りすぎようとした。
「そうか、君。そんなんで家に帰れないだろう。ワシの家で少し休みなさい」
僕は流れで管理人さんの車に乗っていた。
「どうぞ、上がんなさい」
「お邪魔します」
なんとか声がでた。
「横になるなり泣くなりすきにしていいからね」
その優しい言葉で僕の心は決壊した。
僕はその場で崩れ落ち大泣きした。
しばらくして
「少しは落ち着いたかな?」
「はい、すいませんでした」
「いいんだよ、感情を出すのはいいことだ、それが例え辛いことだとしても」
年齢と見た目も会ってかその言葉はとても深く聞こえた。
「ただいま」
「あ、僕そろそろ帰ります」
「そうかい、もう大丈夫かね」
「はい、妹も心配してると思うので」
僕は玄関に向かう
「おやおや」
「あっ」
司書さん
「おや、知り合いかい?」
管理人さんが声をかける。
「坊やこないだうちの図書館に来てたのよ」
「そうか、そうか。まぁこの町は狭いからね」
夫婦だったのか…
僕はお礼を言って家に帰った。
玄関の前に沙夜が座っていた。
僕の姿をみると泣きながら抱きついてきた。
「遅いよ、お兄ちゃんと一緒にいた人が事故に合ったって聞いたからもしかしてお兄ちゃんもと思って心配してたんだから」
沙夜は泣きじゃくっている。
そうだ、感情を出すのはいいことなんだ。
「ごめんな、沙夜。僕は大丈夫だから」
僕の頬をまた涙が濡らしていく。
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