殺人鬼
あそこか
北條の家は特段大きなアパートではなかった。
「来てみたものの、どうしようか」
「だから言ったじゃない。どうにもならないわよ」
僕は周囲を見渡した。
「誰もいないな…ちょっと玄関まで行ってみる。もしかして鍵が開いてるかも」
「ば、そんなわけないじゃない」
僕は構わず、北條の部屋の前まで行った。
ドアノブを動かしてみる。
ガチャ…開いた。
「うそ」
「入ろう」
「いや、だめよ。犯人がいたらどうするの」
僕は沙夜の言葉を無視して、中に入った。
人の気配はない…
僕は靴を脱いで部屋に入った。
「ちょっとお兄ちゃん」
「静かに…何か証拠を、証拠を探さないと」
沙夜も仕方なく部屋に入る。
「お兄ちゃん、美咲さんが書いてるノートがある」
「何が書いてある?」
「事件の件について、彼女なりにまとめてあるみたい」
「よし、それを持っていこう」
「ちょっと泥棒だよ」
「仕方ないだろ。もう手段を選んでる場合じゃない、美咲さんがどこにいるかもわからないんだから、そのノートにヒントがあるかもしれないし」
「お兄ちゃん、変だよ」
「うるさいな、それなら一人で先に帰れよ」
沙夜はビクッとする。
「そんなに彼女が心配?」
「当たり前だろ」
「彼女が犯人だとしても?」
「何を言っているんだ」
「だって、見つかったのは彼女の指だけ、これだけ連続殺人が続いていたら、指が見つかっただけで美咲は死んだといつの間にか信じてしまう」
「死んだふりのために指を切ったってこと」
「これだけの人を殺してるんだよ。そのくらい平気でやってみせると思うけど、殺人鬼は私たちの予想を越えるのよ」
急に冷静に沙夜が話し始めたため僕は呆気にとられてしまった。
その後は黙って部屋を探ったが特に得られるものはなかった。
そして、僕たちはこっそりと部屋から出て行った。
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