約束
「最近お兄ちゃん、事件のこと話さなくなったね」
「えっ、そうか?沙夜も話してない気がするけど」
沙夜は箸を置いた。
「私は諦めてないよ。犯人は絶対にみつける。お兄ちゃんはもう諦めたの?」
僕は沙夜の強気な声に思わずびっくりしたが
「僕だって諦めてないよ、なんとか証拠をみつけて犯人を捕まえたい、でも手がかりもない」
「お兄ちゃん、北條美咲に会ったでしょう」
「えっ、何でそれを」
「私も事件を追ってたから、北條美咲を捕まえたらお兄ちゃんに話したって言ってた。なんで黙ってたの」
「ごめん、でもこの事件に関わってる人がどんどん殺されていくから、沙夜がもしそんなことになったらと思って…」
「そう、でも大丈夫」
沙夜の両手が僕の頬に触れる。
「私は死なない、お兄ちゃんを残して絶対に死なないから、だから隠し事はやめて、私にもノートを見せて」
「わかった、ごめん。沙夜」
僕はカバンからノートを出した。
「これが北條美咲のお兄さんのノートか、今日帰ったら読むね」
「ああ」
「さっ、学校行こう」
「う、うん」
沙夜はくるりと振り返る。
「お兄ちゃん、さっきの約束…忘れないでね」
僕は沙夜に壊れた母の顔がダブって見えた。
もしかしたら沙夜も壊れているのか?
いや、もしかしたら壊れてるのは僕の方なのか?
「早く、遅刻しちゃうよ」
僕は黙って沙夜に付いていく。
お読みいただいてありがとうございます。ブックマークや、評価いただけるとうれしいです。
ミステリアスになってきたかなと思いますがどうですかね