接触
「ねえ、沙夜」
僕は出掛ける前に声をかけた。
「何?お兄ちゃん」
「その、北條の妹さんと話できないかな?」
沙夜は怪訝な顔をする。
「無理よ、昨日もいったけど、お兄ちゃんとお姉ちゃんを失ったんだよ」
「そ、そうだよね。ごめん。忘れて」
沙夜は機嫌が悪くなり先に出掛けてしまった。
母さんは相変わらず寝ている。一応ご飯は作って置いていくが手をつけてる様子はない。
このままでいいのだろうか…
僕は一人で登校することになった、沙夜を一人で行かせて大丈夫だったかな。
しかし、北條の妹がやっぱり気になる。
ごめん、沙夜。やっぱり僕はその子と直接話がしたい。
僕は沙夜に今日は食料品を買うから先に家に帰るようにメールをした。
そして、放課後。校門の前ではいつも沙夜が待っているがメールを信じて先に帰ってくれたようだ。
僕はなんだか罪悪感を感じた。
中等部の校舎から生徒が出てきた。僕はあわてて声をかける。
「あの、北條さんってまだ学校にいるかな?」
突然話しかけられた女子生徒は怪訝な顔をしながら言った。
「北條さんなら、図書室に一人でいるよ、いつも遅くまで」
僕はその女子生徒に礼を言って図書室へ急いだ。
図書室の扉をあける。
司書さんがチラリとこちらを見た。
僕は辺りを見回す。しまった。北條の妹の顔がわからない。
僕はふとおもいだした。中等部の生徒は名札を着けていた。
それを頼りに探すしかないか。
しかし、図書室には女の子がひとりポツンと座って本を読んでいた。
他には誰もいない…てことはあれが妹さんか。
僕は恐る恐る近づいてみる。
女子生徒は僕に気づき立っている僕を見上げる。
僕はすかさず胸元の名札を見た。北條と書かれた名札だ。
「あ、あの僕、北條君の友達で…」
しまった、どうやって話しを持っていくか考えてなかった。
すると
「ここで話すのは嫌です。場所を変えましょう」
「う、うん。わかった」
場所っていってもここら辺にはファーストフード店とかあったかな。そんなことを考えながら僕は後を追った。
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