死神との戦い
「な、何を言っているんだ。沙夜」
瑛人は動揺する。
「いつからなの?いつからこの町の殺人事件に加担してたの?」
「何を言っているんだよ」
「とぼけないで、そもそも何で生きているのよ、あの家の遺体はあんたじゃないなら誰の遺体なのよ」
「し、知らない。そう僕はあの日。いきなり母さんに襲われたんだ、だから今まで逃げていたんだよ」
「くだらない。もう全部わかってるのよ。この町の殺人鬼はあんたとお母さんと真奈美の3人でしょ」
「もう本当のこと言っちゃえば瑛人くん」
「君は黙っててくれ」
「はいはい、そうしますよ」
「この町の殺人気は母さんと、ここにいる真奈美さんだろ?僕は沙夜とずっと2人で犯人を探してたじゃないか」
「そうね、ずっと探したわよね。ずっと嘘をついていた。いかにも自分が被害者のように」
「…僕はやってないよ」
「お父さんを殺したのは、安田刑事と私達の祖父でしょ。それは本当だと思う」
「そうだよ、それを指示してたのは母さんだ」
「そうね、そうだと思う。でもあの時あんたは気づいてしまったのよ。人が死ぬ姿に興奮する自分に」
「…バカを言うなよ」
「そのあとはお母さんに聞いたんでしょ。この町のこと殺人の計画のこと」
「…」
「でも、予想外のことがおきた。ここにいる相良真奈美この町の本当の殺人鬼が再び目覚めてしまった」
真奈美はにこにこと沙夜に手を振る
「そこからは騙し合いよね。あんたは真奈美に近づくことで真奈美の動きを封じる。その一方で真奈美もあんたが怪しいと思い近づく」
「そうなのか?真奈美さん」
「…さあ。どうかしら」
「つっ」
「あの日、あそこにあったあんたの遺体は誰だったの?」
「あれは私が用意したのよ、瑛人くんと体格が似ているそこら辺の男を殺してね」
「結局、あんたは誰を殺したのよ」
「ふ、ふふふふ。あははははは」
瑛人が突然笑い出す。
「そうだよ、全てはあの日から始まった。父さんのDVは知っていただろう、母さんはずっと苦しんでいたんだ、だから僕たちで殺そうと計画を立てたんだ」
「えっ、あんた最初から…」
(あの親父DVなんて聞いてないわよ)
由梨が苛立ちを見せる。
誰にも見えないが
「そうだ、最初からすべての殺人に関わっているよ。何でだと思う?」
「し、知らないわよ」
「お前のためだよ。沙夜」
「私の…ため」
「そう、全てはお前のためだ。お前に近づく危険な奴らを排除するために僕たちは殺人を続けたんだ」
「意味がわからない。今まで殺された人間が私に危害を加える要素なんてないじゃない」
「父さんはいつお前に暴力を振るうかわからなかった、それに北條は僕らの素性を調べてたんだよ、沙夜のことも…気持ち悪いだろう。だから殺したんだ。そしたら今度は妹だよ。あの子に会おうとして女子生徒に声をかけたらそのことを沙夜に言っただろ?」
「それだけで殺したの…」
「北條美咲は僕らが犯人とかなり早い段階で気づいていた。だから早めに始末しないといけなかったんだ」
「あいつ、沙夜に好意を持ってたんだ。だから殺した」
何を言っているんだこいつは…頭がおかしくなりそうだ。
「そのあとは真奈美さんと出会って僕の心は揺れたんだ、母さんたちと沙夜を守るより、真奈美さんと一緒に行動した方がもっと満たされるんじゃないかって」
「嬉しいわ、瑛人くん」
「でも、母さんはそれを許さなかった。真奈美さんの友人を殺し、それどころか真奈美さんまで手を掛けようとした」
「そこで、僕とは1度死んだことにしようと決めたんだ」
「騙されただろ、沙夜」
「あんた、さっきから何言ってるのよ」
「じゃあ、フリーライターを殺したのも私に近づこうとしたから?」
「そうだよ」
「安田刑事とあの部下は?」
「安田は逃げ出そうとしたから部下の松田に頼んで殺してもらった」
「でも、松田も使えなくてね。それがいやで母さんが殺したんだ」
「私たちの祖父は真奈美が殺したんでしょ、あんたはそれでよかったの?」
「ああ、目の前で人を殺すところを見れるなんて貴重じゃないか、興奮したよ」
「でも、殺してなかったんだから真奈美さんも嘘つきだなぁ」
「まだ、あのときは瑛人くんのこと完全に信じてなかったからね」
「はは、それは残念」
「で、そのあとの殺人は母さんVS真奈美さんってことだ」
「バカじゃないの」
「どうだ、わかっただろ。今の話までで僕はまだ1人も殺していないことが」
「その後…母さんと保険医とスーパーの連続殺人はあんたでしょ」
「なんだ、バレてたか」
「母さんが沙夜を困らせてたからさ。殺したんだ。母さん、僕が生きてたこと知らなかったんだよ」
「真奈美さんの用意した遺体は母さんと沙夜を騙すことができたんだ、すごいよ真奈美さん」
「ありがとう」
(ここにいると私まで頭がおかしくなりそうだ)
「母さんを殺したとき、これが殺しかと興奮してしまってね」
「あとは母さんに関わった人間を殺して完結さ」
「真奈美さんは脱獄。そして僕はすでにこの世にいない人物。完璧だろう」
「あんた…最初から狂ってたんだね」
沙夜はベッドから立ち上がる。
由梨は沙夜の手に包丁があることにぎょっとする。
あの子いつの間に。
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