真犯人
その日はついに訪れた…
時間は23時をまわっていた。
存在を感じた由梨はゆっくりと目を開ける。
「おい…来るぞ、本当に1人で大丈夫なのか?」
由梨が腕を組ながら沙夜に言う。
沙夜は黙ってうなずく
病室のドアがゆっくりと開く。
2人の男女が病室に入ってくる。
由梨はその2人の顔をギロリと睨み付ける。
この手でこいつらに触れることが出来るのなら今すぐぶん殴ってやりたい。
でも私にはそれが出来ない…
由梨は唇を噛み締める。
男は沙夜のところまで歩く
「やっと、会えた。かわいそうにこんなにボロボロになって」
男の手が沙夜の頬を撫でる
「なんでも、精神が崩壊しちゃったみたいよ。さっきカルテをみたけど…」
「そうか、でも仕方ないよな。こんなに辛いことがあったんだから」
「一緒に連れていきたい?」
真奈美が聞く。
「本当はそうしたいけど、僕のやっていることを理解してはくれないだろう」
「そう、そうなのかしら」
「そうだよ、真実を知ってしまったら、もう立ち直れないから」
男はしばらく黙って沙夜を見つめる。
「本当に目を覚まさないのかな、次に目を覚ますときは幸せになるんだぞ」
こいつ、自分のせいで沙夜がどれだけ苦労したと思ってるんだ。
由梨は近くに置いてある花瓶をおもわず掴む
本当に不便な体だ。人には触れられないのに物には触れられる。
だからこの花瓶を持ってこいつを殴り殺すことは可能だ。
だけどそれは…死人が人殺しをするのは禁忌だ…
(だから、私の前で殺しなんてやってくれるなよな)
男はゆっくりと立ち上がる。頬には涙が伝う。
「もういいの、本当に置いていっていいのね」
真奈美が聞く。
「ああ、これで終わりだ、元気でな。沙夜」
男は沙夜の頭を撫でる。
そして、立ち去ろうとした男の手を沙夜が起き上がり掴む。
男と真奈美は突然の出来事に動揺する。
「勝手に終わらせるんじゃないわよ」
由梨は部屋の電気をつける。
「な、沙夜。意識が戻ってたのか」
「え、だってカルテには精神障害で意識が…」
「ある人に目を覚まして貰ったのよ。あの人がいなかったら私は死んでたわ。さあ、すべて話してもらうわよ…」
「お兄ちゃん!!」
お読みいただいてありがとうございます。ブックマークや、評価いただけるとうれしいです。