小林由梨
「幻聴じゃないの?」
「違うわよ、私はここに存在している…いや?存在してるのかな?」
「言ってることがわからない」
「あなたのお父さん、あの家で今も一人でいるわ」
「何言ってるの?」
「本当のことだからしょうがないでしょ。だから、お父さん…犯人が誰かも知っているわ」
「…」
「あなたも知っているんでしょ、犯人」
「…」
「認めたくないのはわかるけど」
「何で、何でよ」
「わからないわよ、だけど事実なんだからだから、本人から真実を聞きなさい」
「でも…」
「大丈夫よ、あの人はあなたを殺さない…と思う」
「ねぇ、あなたが本物ならお父さんはなんて言ってたの」
「私に犯人を説得してくれって言われたわ、でも私の声は通常生きてる人には聞こえないのよね」
「じゃあ私死んでるの?」
「死にたがりだからじゃない」
「死にたがりって」
「本当のことでしょ」
「…」
「お父さんを成仏させてあげてよ」
「え…」
「お父さんはこの事件が解決しないと成仏できないのよ」
「そんなこと言っても」
目を開けるとぼんやりとだが声の主の姿が見えたような気がした。
「思ってた感じと違う…」
「驚いた、私の姿まで見えるんだ」
「ぼんやりとだけど…ヤンキー」
「ヤンキーじゃないわよ」
「いや、金髪だし。ピアスも開いてるし」
「…ヤンキーのイメージってそういうもん?」
声の主が呆れたように言う。
「あなたはなんなの?」
「ああ、まあ色々あってこんな身体になったんだよ。あ、名前ね。小林、小林由梨だよ。でも驚いた、叔父さん以外に私を見れる奴がいるなんてね」
「は、はあ」
「生きてりゃ、17歳になるんじゃねぇかな」
ぽりぽりと頭をかく仕草をする。
「やっぱり、口調がヤンキー」
「うるせぇよ、少しは目が覚めてきたみたいじゃねぇか」
「そう?」
「で、どうするの?」
「待つよ、絶対にここに来るから。その時に全てを暴く」
「そう、無理しないでよ。相手は殺人鬼なんだからさ」
「殺人鬼…か」
「あっと、悪い」
「いいよ、事実だし、でも何でだろうね」
「理由はわかんねぇよ、でも事実は変えらんないからね」
「そうだね、ありがとう。小林さん」
「由梨でいいよ。まぁどっかでまた会うだろ、じゃあね」
私は目を開ける。
「夢だったのか?」
あの人は…
でも、もやのかかった頭がスッキリした気分だ。
もう覚悟は決めた。待ってるから…
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次回作の主人公登場です。




