確信
とぼとぼと歩いていると後ろから車の気配がした。
「よう、お嬢ちゃん。こんな山奥に一人で大丈夫か?」
無精髭を生やしたおじさんが声をかけてきた。
こういうのは危ないから無視がいい。
私はそのまま歩いた。
「おいおい、町まではまだ距離あるぜ、よかったら乗ってけよ」
「大丈夫です」
「お前の親父さんは刑事に殺されたってよ」
「えっ?」
「まぁ、乗ってけよ。俺が首を突っ込むのはこの町につくまでだからな」
「あなた何者?」
「あー、俺というか姪っ子が色々とな」
私は男の車に乗る。
「うちの姪っ子は成仏してない人間の声が聞こえるんだとよ」
「そんな力あるの?」
「ああ、あくまでこの世に未練があるやつだけみたいだけど」
「じゃあ私のお兄ちゃんも見えるの?」
「どうだろうな、おじさんは誰もいない後ろの席を見る」
「どうやら、話せたのは親父さんだけみたいだぜ」
「じゃあ、お父さんはなんて」
「中肉中背の刑事と爺さんに殺されたってさ、息子、娘をあの家から逃がしてほしいって頼まれたらしいけど、今回の件は俺達には難しすぎるからよ」
「そんな…」
(でもこの人はこの町の人じゃない。でも事件のことを詳しくわかっている)
「その姪っ子さんには会えないんですか?」
「ああ、残念ながらそうそう会えるもんじゃねぇんだ」
「どういうこと?」
「まぁこっちにも色々事情があってね、ただ、この事件を解決できるのはお嬢ちゃんしかいないから、諦めないで欲しいって言ってたよ」
そうこうしているうちに町に着いた。
「さ、着いたぜ。後は自分で帰れよ」
「ありがとうございました、あのあなたは…」
「俺はしがない探偵だよ、じゃあな」
おじさんはさっさと言ってしまった。
「おい、由梨。これでよかったのか?」
「いいよ、結局首を突っ込んでくれたね」
「うるせぇよ、じゃあ帰るぞ」
…………
さて、どうしようか。
家にすぐに帰るのも気まずいな。
そうだ図書館に行って祖母と戦おう。
「おーい、沙夜ちゃん」
左側から自分を呼ぶ声が聞こえる
「なに、またあんた」
真奈美だ。
「つれないわねぇ、それにしても何?おじさんの車から降りてきて、そういうバイトでも始めたの?」
「ば、そんなわけないじゃない。親切な人よ」
私は顔を真っ赤にして否定した
「ふーん、でもどうしてあのおじさんと一緒に?」
「あの人、正確にはあの人の姪っ子が不思議な人で、殺されたお父さんと話したんだって」
「何それ?霊が見えるってこと」
「そうなのかな?その子の話しによると、お父さんは管理人と安田刑事にやっぱり殺されたって、それで私とお兄ちゃんに関わる人間も次々に殺される可能性があるからふたりで逃げてほしいって言ってたって」
「へー、その子本当に見えるのかもね、ねぇその子に会えないの?」
「色々事情があって会えないって」
「そっか、残念。でもふたりで逃げろってことは、お父さんはお母さんも犯人って分かってるってことね」
「あ、そうか」
「すごいわね、その子。それにしても何で山奥から帰ってきたの?それも一人で」
「お父さんとお兄ちゃんのお墓参りよ」
真奈美の顔に一瞬緊張が走ったような気がした。
「そう」
「で、帰るときにお母さんにあんたが犯人だろって問い詰めたら、頭を冷やせって車から降ろされた」
「あはは、お母さんもやるわねぇ、でお母さんはやっぱり否定したの」
「当然否定したわ、でも動揺してる風にも見えた」
「そうなんだ、じゃあ…というかもうわかってるけどお母さんは犯人確定ね、どうするの?これから?」
「正直、他の殺人事件には興味がない、お兄ちゃんを殺した犯人だけこの手で殺せればいいから」
「そうね、あなたにとってはそれが一番よね」
「で、あんたは私になんの用?」
「たまたま見つけたから声をかけただけ、でも面白い話が聞けてよかったわ、じゃあね」
真奈美はさっさと帰ってしまった。
お墓参りの話をしたとき、真奈美に変化があった…もしかしてあいつが犯人?
私はさっていった真奈美の方をみつめる。
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このおじさんは前話の後書きを読んでいただけると誰だか少しわかります