お墓参り
ある日の夕食の時私は思いきってお母さんにきりだす。
「ねぇ、お母さん、私お兄ちゃんのお墓参りに行きたいの」
「え!!」
お母さんはびっくりする。
「でも、あなた精神は大丈夫なの」
「うん、ちゃんと現実を受け止めたいんだ。それに1年も立つのに1回もお墓参りに行ってないなんて、お兄ちゃんに悪いもの」
「そ、そう」
お母さんは困惑している。
「どうしたの?、何か都合が悪いの?」
「そ、そんなことはないわよ、じゃあ今度の日曜日に行きましょう」
その後お母さんは別の話題に切り替えた。
何だか怪しい。
お墓に見られてはいけない何かがあるのか?
それともお墓が実はないとか?
とりあえず、日曜日を待つしかないか。
私は部屋に入る。
ああは言ったものの実際はお墓参りなんか行きたくない、お兄ちゃんの死を受け入れたくない。でもお母さんのあの反応は何かがあるに違いない。
ふぅっと私はため息をつく。
そして、その日はやって来た。
「こんな格好で大丈夫?」
私は黒をメインにした服装にした。
「いいのよ、家族の墓参りなんだから普段着で」
「そういうもの?」
「そうよ、じゃあ車出すから外で待ってて」
「そんなに遠いの?」
「ここから車で20分ってところかしら、ここの町はそこしか墓地がないのよ」
「そうなんだ」
今日のお母さんは至って冷静だ。こないだの慌てぶりはなんだったんだろう。
「お待たせ、じゃあ行きましょう」
私は助手席に乗る
車は軽快に走っていく。
すると突然お母さんが急ブレーキを踏む。
「な、何どうしたの?」
「今、女の子が目の前を通ったような気がして」
「ちょっと止めてよ…轢いたの」
「わからない、ちょっと見てくる」
お母さんは外に出る。
そしてすぐに戻ってきた。
「勘違いだったみたい」
「ビックリさせないでよ」
私はまだ心臓がドキドキしていた。
「さぁ、もうすぐ着くわよ」
お母さんが私に声をかける。
「ずいぶんと山奥なのね」
「ええ、でも見てすごく良い景色なのよ」
「本当だ」
「お父さんと瑛人は同じお墓に入っているからね」
お母さんが言う。
「あ、そうか。お父さんのこと忘れてた」
「あらまぁ、お父さん悲しむわよ」
お水とお花をもって墓前の前に立つ
【南川家】
と記された墓石を見て私は感情が爆発した。
涙がボロボロと出てくる。
「沙夜、やっぱりまだ来るのは早かったのよ」
「うう、お兄ちゃん、お兄ちゃん」
一度出た涙は止まることはなく嗚咽に変わる。
「沙夜、落ち着いて、ちょっとそこに座りなさい」
お母さんは慣れた手付きで水を墓石にかける。
そして、お花も飾る。
線香に火をつけると私に渡してきた。
「ちゃんと拝んであげて」
「私は泣き腫らしてパンパンになったひどい顔をお母さんの方に向けながら線香を受けとる。
そして、お墓のところに置いた
(お兄ちゃん、あなたを殺した犯人は必ず私が見つけて…殺してやるから)
後ろで早苗はニヤリと笑っている。
「きゃあ」
私はお母さんの悲鳴にびくりとして後ろを振り向く。
「ど!どうしたの?」
「急に水を組んでた入れ物がひっくり返って」
お母さんの足はびしょびしょになっていた。
「もう、今日は変な日ね」
誰かが何かを知らせようとしているのか…
だとしたら誰?
お兄ちゃん?
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