瑛人について
「鍵」
「えっ?」
「鍵貸して」
「う、うん」
私は真奈美に鍵を渡す。
「さてと、色々覚悟しておいてね」
真奈美はガチャガチャと玄関の鍵を開ける。
そして、玄関を勢いよく開ける。
すると、包丁を持った祖母が、勢いよく飛び出してきた。
「ビンゴ!!」
真奈美は包丁を持つ祖母の手をつかみその勢いでそのまま背負い投げをする。
「ぐはぁ」
「いきなり包丁を相手に向けるなんて失礼よ、おばあさん」
「ぐうぅ」
「さ、詳しい話しは部屋でしましょう」
「嘘、でしょ」
「嘘じゃないわよ、ほらあなたも中に入って」
「あらあら、すごいわねぇ」
私は部屋に入り吐き気を催す
急いでトイレに入って胃の中のものを吐き出す。
「いい加減なれたら?」
真奈美が呆れたように言う。
「なれるわけないでしょ」
「これは誰の遺体ですか?おばあさま?」
床にバラバラに転がる遺体をさして真奈美は質問をする。
「…」
「黙るのね」
真奈美は手慣れた手付きで祖母の両手を縛る
「あなた、人を殺したことはないわね」
「な、なんじゃと」
「だって、慣れてないんだもの、殺しは別の人で主に処理をやってたのね」
話しながら祖母を椅子に座らせて縛り続ける。
「さて、もう一度聞くけど、この遺体は誰ですかー?」
「…」
ふぅ、真奈美はため息をつく。
すると、ポケットからペンチを取り出す。
「利き手はどっち?」
「…」
「包丁を持ってたのは右手か…じゃあ左手から行こうかな」
真奈美は祖母の左手の爪を一枚ペンチではがす?
「ぎゃぁぁぁ」
「ちょ、ちょっと止めてよ」
ギロリと真奈美は私を睨み付ける。
私は思わず固まる。
「やめないわよ、沙夜ちゃん。瑛人くんを殺した犯人を見つけるためよ、わかるわよね?」
「そうだ、お兄ちゃん…」
「どう?答える気になった?」
「この遺体は沙夜とトラブルになった少年少女だよ」
「やっぱりね、それで校門前にこの子たちのご両親の遺体をおいたのも貴方よね?」
「そ、そうじゃ」
「なんでそんなことしたの?」
「沙夜にこれ以上この事件に首を突っ込んでほしくなかったからじゃ」
私はその言葉に思わず頭に血が登る
「ふざけんな、お兄ちゃんを殺しておいて、首を突っ込むなってどういうことよ」
「あら、いいわね」
「ねぇ、この子たちはあなたが殺したわけじゃないでしょ?殺したのは誰?」
「…」
「えいっ」
また祖母の爪をはがす。
「ぐぅぅぅ」
「言いたくないの?」
「…」
「沙夜ちゃんの前で言いたくないのはわかるけど、もう沙夜ちゃんも気づいているわよ」
「…」
「あ、そうだ。先に行っておくけどあなたを殺す気はないからね」
「お、お前の目的はなんじゃ」
「あなたの口から真実を話してほしいだけよ」
「この子達を殺したのは私の娘だ、つまり沙夜…あんたの母親だよ…」
わかってはいたがショックだった…
「なんで、なんでお母さんは」
「あんたを守るためだよ」
「ふざけないで、私を守るためになんで殺すのよ」
「知るものか、それがあの子のやり方なんだよ」
「まぁ、わからなくはないけど」
「沙夜ちゃん、それよりもっと聞きたいことあるんじゃない?」
「えっ?」
…
「お兄ちゃん、お兄ちゃんを殺したのもお母さんなの?」
「それは違う、瑛人は違う」
「うそよ、だって殺し方も一緒じゃない」
「早苗からしたら瑛人も守るべき対象だったんじゃよ、だから殺す訳がない」
「じゃあ、誰が殺したのよ!!」
「やっぱりね、そんな気がしたのよ、あーあ、手がかりはなくなったか…」
「え?」
「私は直接瑛人くんを殺したのが誰か知れればそれで良かったから、私の今日の仕事は終わり」
ザクザクと祖母を縛っていたヒモを切る。
「じゃあね」
「ちょ、ちょっと置いてかないでよ」
私は慌てて真奈美の後を追う。
「何、私はもう帰るわよ、あなたも自分の家に帰りなさい」
「私も帰らないと…あなたのお母さんをだいぶ挑発しちゃったからね」
私は真奈美がいなくなるのを見届けることしかできなかった。
私は祖母を無視して、部屋に戻った。
そして自分の部屋に戻って布団にくるまって現実逃避をした。
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