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引っ越した町は悪に満ちている  作者: まなた
沙夜編
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早苗の楽しみ

パートを終えた早苗は買い物を済ませて、家に向かっていた。


「あら、管理人さん」

早苗は管理人に気づいた。


「おやおや、今帰りかい?」


「ええ、そちらは代わりないですか?

私のところには警察が来ましたけど」


「うちには警察はこなかったけど、ネズミはいたよ、ちょっと驚かしちゃったけど」


「もう、孫をネズミだなんて失礼ね」


「でも、犯行場所はばれたようなもんだから…また考えないとねぇ」


「そう、他にいいところはないの?」


「これ以上、殺しをしなければ問題ないんだけどね」


「それは無理じゃない?色々と邪魔をする人が多いから」


「そうかい、じゃあまた場所を見つけとくよ」


「ありがとう、おか…管理人さん」


「やれやれ、どうしてああなっちまったのかねぇ」

祖母は狂気とかした自分の娘を見届ける。


沙夜は今頃、ビクビクしてるのかしら。強めに玄関を開けて驚かしちゃおうかな。

ふふ、かわいいわぁ


早苗は玄関の前に立つ。

さぁてと、ガチャン。わざと勢いよく玄関を開けた。


大きな音で玄関があいて、私はびくりとする。


だ、誰?


誰が入ってきたの?


何で無言なの?


私の部屋のドアノブがカチャリと音を鳴らす。


だめだ殺される…


「ただいまー沙夜、あれ?どうしたの布団にくるまって」


「…」

私は恐怖で声が出ない。


お母さんだったら普通なら安心するところだが、この人は殺人鬼だ…


「くるまってないで出てきなさい、今ご飯作るから」


「…」


「どうしたのかしら?まぁいいわ」


「あ、そういえば。管理人さんに会ったのよ。上の階でネズミが出たんだってね、気をつけてね‥沙夜」


「…」


お母さんにもばれた。

どうしよう、いつ殺されるんだ。


あの日の記憶がよみがえる。


食卓で首のない、お兄ちゃんの遺体


うぅ助けてよ…お兄ちゃん。


私はひたすら泣く。


自分の心が限界に近いことがわかる。


このまま死んでしまった方が楽かもしれない。


【死ぬな、沙夜】


「えっ?」

お兄ちゃんの声が聞こえた気がした。


「そうだね、死ぬわけには行かないよね、お兄ちゃん」


私は独り言をぶつぶつと言う。


ドア越しに早苗はにこりと笑う。


「ふふ、かわいい」


翌日


結局私はあれから部屋から出なかった。


生きてる…殺されずにすんだ。


流石にお腹がすいたな。


私は恐る恐る部屋を出る。


「おはよう、沙夜?体調はどう?」


「あ、えっともう大丈夫」


「そう、よかった。朝ごはん食べれるようなら食べてね」


「う、うんありがとう」


あんなに神経がすり減ってもお腹は空くんだな。


私は目の前の食事を無心に食べ続けた。


「そういえば、学校から連絡あって、来週まで休校だって」


「えっ?」


「だってあんなことがあったからね、あと不用意な外出もダメだって」


「そうなんだ、じゃあおとなしくしてる」


「保険医の先生も心配してたわよ、あなたしょっちゅう保健室にいたんだって?」


「え、ええちょっと貧血ぎみで」


「そう、まぁゆっくり体を休めなさい、私はお仕事頑張ってくるから」


「うん」


「あと、誰か来ても出なくていいからね。何かあったら怖いから」


「そうね、そうする」


お母さんは、身支度を終えるとパートに出掛けた。


ふう、やっと気が抜ける。

しかし、しばらく犯人捜しはするなと釘を刺されたようなものだ。

どうすればいいんだろう。


お兄ちゃんならこんなときどうする?


私の味方はもういない…





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