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引っ越した町は悪に満ちている  作者: まなた
沙夜編
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荒れる

火災現場は騒然としていた。


中には子供もいたのか、泣き叫ぶお母さんと思わしき人もいた。


私のせいだ。

私が不用意に相良家に関わったから…


私は罪悪感を抱えながら再び家に帰った。


「沙夜、大丈夫?」

お母さんが声をかけてくる。


「別になんでもない、ほっといて」

私は自分の部屋に入っていった。


「沙夜…ご飯置いとくから食べてね」

お母さんが寂しそうな声で扉越しに話しかける。


あんな惨劇をみて食欲なんてわくわけがない。

どこもかしこも殺人鬼だらけだ。

苦しい、苦しいよお兄ちゃん…


私は枕を抱いて泣いた。


気づくと朝になっていた。

あのまま寝てしまったのか。


あの火事でどれだけの人が犠牲になったのだろう。


私は居間に行きテレビをつける。


死者は10人を超えるとの報道だった。


「ああ、それ昨日火災があったんだって、怖いわね」

お母さんは話しかけてくるが私は特に返事をしない。


食卓にご飯が並べられる。

面と向かって食事をするが会話はない。


この半年ずっとこんな感じだ。

お母さんは最初のうちは何とか会話をしようとしたが、今は少しずつ諦めたのか口数もすくなくなった。


私はご飯を食べ終えると食器を運びそのままカバンを持って学校に向かった。


お母さんはあれからスーパーでレジ打ちのパートを始めた。


いくらお父さんの生命保険があってもやはり生活していくには仕事をしないとダメらしい…


遅くまで働く為、夕飯は一度家に帰って用意してくれている。


そこまで尽くしてくれていても私には殺人鬼でしかない。


お兄ちゃんを殺したのは絶対にお母さんだ。


絶対に証拠を掴んでやる。


そんなことをもう半年前から考えていたが結局真相は掴めないままだ。


このままでは事件が風化してしまう。


しかし、真奈美はあの時なぜあそこに現れたのか…


もしかして、事件の真相を私に知られたくなかったから…だとしたらあいつがお兄ちゃんを…


「私は瑛人くんを愛していたのよ」


真奈美の言葉が頭をよぎる。


あの発言をしている時の真奈美は間違いなく本物だった。


真奈美は真奈美で犯人を探すことに必死になっているのか?


そうこうしていると学校に着いた。

また、保健室にいこうか、いや今日はクラスで寝てよう。


私がクラスに入ると案の定クラスメイトが一瞬固まる。

本当にウザいな。私は自分の机に座ってスマホをいじった。


「昨日の火事すごかったよね」


「となりのクラスの子が死んだらしいよ」


そんな話が聞こえてきたが、真実など簡単に隠蔽されてしまうのだな…


一人の女子生徒が私の前に立っている気がした。


「ねぇ、あんた。昨日火災現場にいたでしょ」

私はその声の主を見上げる。


「あんただれ?」


「な、同じクラスの顔も覚えてないの」


「興味ない、それに火災現場にいたからなんなの?」


「よく、放火犯は現場に戻るって言うじゃない」


「私を疑ってるってこと」


「だって、あんた昨日相良と一緒にいたでしょ」

しまった、見られていたのか。


「だから何?あの子に聞きたいことがあったから一緒にいただけだけど、あんたに関係あるの?」


「関係あるわよ、美代は私の幼なじみなんだから」


「ふーん、そう」

幼なじみか、じゃああんたはあの美代の悪の部分を知っているの?思わずそう聞きたくなったがくだらない…


「あんた、いい加減にしなさいよ」

私の胸ぐらを掴んでくる。


「ちょっと、美幸。やめなさいよ」

クラスメイトの1人が止めに入る。


「どいつもこいつもうざい」

私は聞こえるように吐き捨てた。


「あんた、ふざけん」

美幸と呼ばれた女子生徒の顔面を思い切り殴りつける。


教室内がざわつく。


私は顔をおさえて泣き始めた女に近づく。


「ちょ、ちょっと南川さん」

さっき止めに入った女だ。

私は睨み付けるとその子は何も言えなくなる。


私は美幸の襟を掴む。


「もう一発殴ってあげようか?」


「ご、ごめんなさい」


「もう、私に関わんないで」


「おい、お前いい加減にしろよ」

ちっ今度は何よ。


このクラスの男子か、チャラい見た目だな。


「女のくせに調子こくんじゃねぇ」

その男子はヒーローのつもりなのか、私に向かってきた。


「ほんと、どいつもこいつも」


私はヒーロー気取りのパンチを軽くいなして思い切り顔面をぶん殴る。

倒れ込んだそいつの腹を思い切り蹴りつける。


「うげぇ」


「本当に誰もかかわんな!!」

私はクラスに響き渡るように大声で言う。


すると教師がやってきた。


ちっ、めんどくさいのがまた来た。


「なんだこれは、どういう状況だ」


「そこに倒れてる女と男に因縁をつけられたから暴力で解決しただけです」


「何を言っているんだきみは」


「証拠なら私のスマホにあります。録画してるので」


教師は黙ってしまう。


「とにかく暴力はだめだ、事情を聞かせてもらうよ」


「はい、わかりました。その代わり、あのふたりの親がでてきたらこの動画をSNSに拡散しますから、良いわね、そこのお二人さん」


教師は言葉を失っていた。


お読みいただいてありがとうございます。ブックマークや、評価いただけるとうれしいです。

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