真奈美の正義
「お、お姉ちゃん」
美代が言う。
「何で、あんたが」
やばい完全に殺される。
「やっほー、沙夜ちゃん。助けに来たわよ」
「は?」
真奈美は右手に包丁を持っている。
「や、やめ」
真奈美は私を通り過ぎていく。
「えっ」
「ぐぎゃぁぁ、やめ、やめろ、まな」
真奈美は、父親をめった刺しにした。
「お、お姉ちゃん」
「お姉ちゃんなんて、呼ばないで血も繋がってないんだから」
そうだ。そういえば、真奈美は両親をころして、祖母を殺したって言ってたよな…じゃあこいつらはなんなの?
真奈美は隙をついて、美代の口を抑える。
「悲鳴あげられちゃ…迷惑だからさ」
そのままズブズブと腹部に包丁を刺していく。
私はただだまって見守ることしかできなかった。
「よし、終わり♥️」
くるりと血だらけの真奈美がこちらを振り向く。
「どういこと、父親生きてるじゃない」
「こいつ、ああ私の叔父よ。でこの子は叔父の子供、両親と祖母が死んだから、私と姉を引き取ってくれたのよ」
「な、なんで殺したの…」
「なんでって、私は沙代ちゃんを助けただけよ」
「だからって、家族でしょう」
「本当の家族じゃないし。別に良くない?」
ダメだこいつは狂っている。
「でも、まさか親戚に引き取られてたなんて知らなかったわ」
「まぁ、言ってなかったしね」
「先に帰っていいわよ、ここは私が何とかしとくから」
「でも、私がここにいたことがわかったら私は疑われるわ」
「大丈夫よ、お姉さんを信じなさい、それにいつまでもここにいるとこの子の母親が帰ってくるわよ」
「くっ」
私は走って部屋を出ていった。
階段で40代くらいのおばさんとすれ違った。
相良真奈美はおそらくあの叔母さんも殺すのだろう…
私はわかっていたが、走り続けた。
ひたすら、ひたすら。
ふと、立ち止まった。
私、あの親父の手を噛んだ…そこから私の事がばれるんじゃないか…
引き返すか?
私は引き返していた。
急いでアパートの階段を上がる。
そして、あの部屋の前についた。
心臓の鼓動がうるさい…
意を決して扉を開ける。
「あ、あんた…何やってるのよ」
「なんだ、戻ってきたの。見てわからない?
解体ショーよ」
その凄まじい光景に吐き気が
「うっ」
私が口に手を当てると
「ちょっと、吐かないでよ?美に反するわ」
目の前の光景をみたら冷静にいられる方がおかしい…やはりこいつは狂っている。
私は黙って引き返す。
そして、階段を下りたところで胃の中のものを吐き出した。
あれはもう私がここにいた証拠以前の問題だ。
ふらふらと現場から逃げるように私は歩いていった。
家に着くと、私はすぐに手を洗った。
最近はただいまも言わない…
お風呂が沸いているようだ。
そのまま、あの光景を流してしまう勢いで私はお風呂に入った。
さっきから消防車だろうか…サイレンの音がうるさいな…
サイレン…まさか。
私は急いでお風呂から出る。
そして、着替えて、またあの現場に向かう。
「どこにいくの」
お母さんの言葉は無視した。
「う、嘘でしょ」
目の前に広がる景色は炎に包まれた、あのアパートだった。
ここには別の住人もいただろう…
あの女…
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