罠
私は美代から渡されたノートを開く。
そこには、真奈美とお兄ちゃんの関係性や、メールのやり取りなどがメモされている。
何これ?メールのやり取りまで記録とか、完全に真奈美のスマホ覗いたってことじゃない。
気持ち悪い…
あ、でも私もお兄ちゃんのスマホ覗いたことあるな…
美代はいたたまれないのかソワソワしている。
「このメールのやり取り…」
「は、はい」
「最後のメール縦読みしてみた?」
「えっ?」
「このメールを縦読みすると、真奈美…さんはお兄ちゃんに助けてほしいとメールしようとしてたみたい」
それを長女さんは自分に向けてのメッセージと勘違いしてお兄ちゃんを殺そうとしたみたいね。
「えっ、今なんて」
「はっ?」
美代が私の肩に掴みかかってきた。
「ちょ、何するのよ」
「お姉ちゃんが、あなたのお兄さんを刺したってどう言うこと」
「ちょっと、落ち着いて」
私は美代を突き飛ばす。
また向かってこようとする美代に
「お兄、兄が真奈美の敵って言われて刺されたって言ってたのよ」
はぁはぁと息を切らしながら私は言う。
「えっ、それじゃあお姉ちゃんは?」
「知らないわよ、警察にも犯人の特徴と兄が言われたことを伝えたけど、未だに犯人が捕まったって連絡はないわ」
「そ、そうなんだ」
「それより、捜索願は出してるの」
「う、うん」
「じゃあ、見つかったら同時に逮捕されるね、傷害で」
もう長女は殺されているのを知ってるのに我ながらイヤなやつだな。
私は真奈美がどんな人間かある程度は知っている。おそらく兄とのやりとりもわざと長女にみせたのだろう。
あの縦読みのメールも。
やはりあの女は信用できないな。
再び私はノートをめくる。
「何もヒントはないわね、わかったのはあんたのお姉ちゃんが私の兄を刺した犯人の可能性があるってことだけ」
「そんな…」
「安心して、別に警察に言うつもりはないわ、あんたも知ってるでしょ?警察は信用できないって」
「…」
「あの感情的になってごめんなさい」
「言いよ、私も伝え方が悪かった、じゃあ帰るから、何かあったら教えて」
「帰れると思ったか…」
「えっ」
私は隣の部屋から声がしたことにドキリとした。
美代の方を振り向く。
美代はニヤリと笑う。
「あんた、騙したわね」
「だって、あなたのお兄さんが犯人ってことはさ」
「お前が犯人の可能性もあるってことだ」
中年の男が隣の部屋から現れた…
父親か…
くそ、私は逃げようとするが、男に捕まる。
「私は犯人じゃないわよ、ふざけないで」
「なら知ってることを全て話せ、それまでは帰さん」
私は男の手を思い切りかんだ。
「いてぇ」
そして、急所にけりを入れる。
「ぐぅぅ」
その場で父親は倒れこむ。
「女をなめるな」
ガチャリ、玄関の扉が開いた…母親か。
だが、私が予想した人物とは別の人間がそこには立っていた。
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