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引っ越した町は悪に満ちている  作者: まなた
沙夜編
139/178

復讐に向けて

あの日、私は泣き叫ぶしかできなかった。

目の前の出来事が信じられなかった。


首から上を失くした兄の姿を忘れることができない。


あの日、私は遅刻をしそうになり慌てて部屋を出た。


「お兄ちゃん、なんで起こして…」


そこには首から上がない兄の姿があった。


私は泣き叫んだ。


そこにお母さんが呑気に玄関から戻ってきた。


「どうしたの…な、え、瑛人…」


「あんたが、あんたがお兄ちゃんを殺したんでしょう」

私は瞬間的にお母さんに詰めより首を締める。


「ちょっ、さ、沙夜。止めなさい」

お母さんの膝蹴りが私の腹部をとらえる。


「ぐうっ」


「あんたが、あんたが」


「落ち着いて、私じゃないわよ」


「嘘つかないで、あんたがこの町の殺人鬼だって私もお兄ちゃんも知っているのよ、だからあんたがお兄ちゃんを殺したんでしょう」


「いい加減にして、私だって瑛人が殺されて、あなたにそんなこと言われて、どうしていいかわからないわよ」


「どうしたんだい!!」


「司書さんが入ってきた」


「あ、これは」


「なんで、あんたが」

私はこんどは司書さんに敵意を向ける。


「旦那が行方不明だからわたしが管理人の仕事をしてるのさ」

そこで声が聞こえたから


「あんたもぐるでしょう、とぼけないでよ」

私はおばあさんにめがけて殴りかかろうとした。

横から私の顔面を母の正拳突きがとらえる。

私はその場でノックダウンした。


「ごめんなさい、まさかこんなことになるとは」


「仕方がない、とりあえず警察を呼ぼう」


「隣の部屋は?」


「なんとかしとくさ」


二人の会話が途切れ途切れ聞こえたが、私はそのまま意識を失った。


兄の事件は証拠不十分で犯人は見つからない。

お母さんはその時、玄関でおばあさんと立ち話をしていた映像が監視カメラに、納められていたためアリバイは完璧だった。


あれから1年。

仏壇に線香をあげて、私は言う。


「言ってきます、お兄ちゃん」


私は中学三年になった。

お母さんは、東京に戻ろうと提案したが、絶対に犯人を捕まえるまでここから離れる気はない。


そもそも、犯人は今目の前にいるんだから。


「おはよう、沙夜、髪の毛ずいぶん伸びたわね」


「伸ばしてるの、前にお兄ちゃんが長い髪が好きだって言ってたから」


「そう…」


「じゃあ」


あの日以来、お母さんと私の関係は冷えきっている。


あの後私は精神をおかしくして半年ほど入院をしていた。今も精神の薬を飲んでなんとか生きている。


どうして、こんなことになったのだろう。


犯人を見つけても絶対に警察には着き出さない。

私がこの手で殺してやる。


「そんなに怖い顔していると、職務質問されるわよ」

聞きなれた声がした。


「あんたは」

目の前にいたのは、相良真奈美だった。


「相変わらず口が悪いのね、瑛人くんの件聞いたわ…」


「あんたが殺したんじゃないわよね」


「ちがうわよ、私は彼のことを愛していたのよ」


「複雑だけどその気持ちは伝わってた…ていうかこんなところにいていいの、殺人鬼さん」


「すっかり、私の事件も風化しちゃったわね、さっきもお巡りさんとすれ違ったけどなにも気付かれなかったわ」


「ねえ、あんたは犯人が誰か知ってるの?」


「ううん、わからない。だから貴方に会いにきたのよ」


「どう言うこと?」


「一緒に瑛人くんを殺した犯人を…そうね、殺しましょう」


「殺すのは私がやる。あんたはまたどっかに隠れててよ、捕まったらめんどくさいから」


「はいはい、じゃあいつものところにいるから、何かあったら教えてね」


「あんたも何かわかったら言いなさいよ」


「はいはい、じゃあね」


私は真奈美を見送る。

あいつは私にとってジョーカーになるのか?

まだ信用はできない。私は真奈美に背を向け学校にむかった。

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