不信感
ガチャリ、僕らは部屋に入る。
「どう?何かある?」
「わからないな、手分けして探…いや沙夜はここでまっていて」
「大丈夫、もし遺体があっても覚悟できてるから、手分けして探しましょう」
沙夜はなんて強いんだろう。
しかし、遺体は見つからない。
「こっちには何もない。沙夜、そっちはどうだった?」
「こっちもなし」
「そうか、じゃあそろそろ飲み物買って戻らないとだな」
「ほんとはもっと探したいけど…」
「また明日にしよう」
「母さんに怪しまれたらアウトだから」
「そうね…」
「ねぇ、もうお母さんに直接言う?」
「えっ」
沙夜の突然の提案に言葉を失う。
「無理よね、私はまだ信じられないし」
「信じられないから直接聞くのもありかもしれないな」
「えっ」
こんどは沙夜が驚く。
「母さんの動機は父さんのDVそれはもう間違いない、でもわからないのはその後の殺人なんだよ」
「直接聞いてもはぐらかされるのが目に見えてるし、その後寝てる間に殺されるかも知れない…」
沙夜は思わず自分の手で自分を守る仕草をする。
「そうだな、もし母さんが犯人だとしたら、刺激をするのは良くないよな。まずは確実な証拠を探そう、それにはこの空いているマンションの部屋が重要な手がかりになるはずだ」
(平然と話しているけど、お兄ちゃん、あなたは管理人さんを埋めたんだよね?お兄ちゃんも私からしたら怪しいんだよ?)
「どうした?沙夜」
瑛人が声をかける。
(そう、今犯人の証拠を集めると言っているけどその鍵だって、あの女から手に入れたんでしょ?何で正義の立場にお兄ちゃんはいるの?)
お兄ちゃんは、自販機でお茶を買っている。
なんだかその姿に私は違和感を感じた。
みんなおかしくなっている。
何が真実なのか…
私もそれを見失っているのだろうか…
「沙夜、行くよ」
僕はさっきからボケッとしている沙夜に声をかけて、母さんが待つ部屋に戻っていった。
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