動揺
「ただいま」
僕は部屋の扉を開けた。
「お帰りなさい、何かあった?」
「えっ、何もないよ。お風呂沸いてる?」
「沸いてるけどどうしたの?」
「いや、なんかさっぱりしたくてさ」
「そう、じゃあゆっくり入りなさい、その間にご飯作っておくから」
「ありがとう」
沙夜が、怪訝そうな顔でこちらをみていたが、そのまま風呂場に向かった。
僕はシャワーを浴びながら今日の嫌な記憶を忘れようとしていた。
嫌な記憶もあるが、真奈美さんには早く会いたい。
でも、管理人が母さんの父親だったとは。
管理人の不在は必ずばれる。
そうなったらどうなるのか…行方不明で捜査されるのか?それとも母さんに僕と真奈美さんは殺されるのか…
なら今ここにいるのは危険じゃないのか?
どうすればいいんだ。
もう後戻りは出来ない…このまま突き進むしかないんだ。
しばらくして、僕はお風呂場から出た。
「疲れは取れた?、洋服も汚れてたけど大丈夫」
「え、ああゆっくり出来たよ」
「そう、よかった」
母さんの笑顔が怖い。
食事に毒でも入っているかも、ダメだ怖くて食べれない。
「どうしたの?瑛人が好きな唐揚げよ」
「あ、うん。いただきます」
「今日のお兄ちゃん変だよ」
「そんなことないよ」
「そういえば、全部読んだの?」
「え?何を?」
「小説!!」
「あ、読んでないや」
「そんなことだろうと思った、早く読んでよ。感想聞きたいから」
「わかった、わかった。あとで読むよ」
「面白かったらお母さんも読もうかしら」
「つまんないよ、あれ」
「まだ読んでるのにそんなこと言うなよ」
「読む前にも言ったじゃん、つまんないって」
「そうだけど…」
「そういえば、明日管理人さんに家賃を払わないと」
僕はドキッとした。
「引き落としじゃないの?」
「まだ、手続きしてなくて手渡ししてるのよ」
「そ、そうなんだ」
「どうかした?」
「ううん、やっぱり母さんの唐揚げはおいしいな」
「やっぱり変なお兄ちゃん…」
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