悪魔の誘惑
僕はシャベルを使って穴を掘っていた。
何をやっているのだろう。
「無理しないでね、瑛人くん」
「うん、大丈夫だよ」
「そろそろいいんじゃない?」
「あ、ああ」
僕は管理人さん…僕の祖父を自分で掘った穴に入れて埋めた。
「見つかったらどうしよう」
「そうね。見つかっても事件にはならないわ」
「なんで?」
「だって、相手は殺人鬼よ、もし、これが見つかったら逆に自分たちが立場が悪くなる」
「それに私達が殺した証拠はないわよ」
「ほんとうに大丈夫かな、それにどうしたのその拳銃」
「あの刑事…松田だっけ?あの人から奪った」
「いつのまに接触してたんだ」
「うん、安田刑事の話をしたらすぐ来たわよ、ご丁寧に拳銃まで持って」
「よく、奪えたね」
「そうね、色々あるのよ、あの人隙だらけだから」
色々と言われて僕は何だか嫌な気分になった。
考えるのは止めよう。
「じゃあ、とりあえず今日はこの辺にしとこうか」
「え、これから犯人について話す…もうこんな時間なんだ…」
「焦らないでまた、一週間後にここで会いましょう」
「本当に一人で大丈夫?」
「私は平気よ、むしろ瑛人くん。その泥をちゃんと払って帰るのよ」
「えっ」
「ああ、そうだね」
「後はお母さんに何を聞かれてもうまくかわしてね」
「上手くできるかな?」
「心配しないで、殺したのは私なのよ、だからあなたはいつも通りにしてればいいの」
真奈美さんは僕に近づき優しくキスをする。
まるで悪魔のキスだ…何もかも忘れさせてくれる。
そして、僕は真奈美さんと別れて家に向かった。
これからどうなっていくのだろうか。
僕はまた彼女と会うのを心のどこかで喜んでいた。
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