電話
僕は早速自分の部屋に入って美咲ノートを手に取った。
初めこれは犯行を示唆するノートかと思っていたが、そのあとに彼女は死んだ。
真奈美さんはこのノートにヒントがあると言っていたが…
ダメだわからない
このノートをもって真奈美さんともう一度会うしかない。
ダメもとでメールを送る。
(一度会って話がしたいです)
帰ってくるはずはない。
と、スマホが鳴る。
エラーメールが返ってきた。
はぁ期待した自分がバカだった。
するとまたスマホが鳴る。
着信だ。
「はい」
僕は小声で電話に出る。
「答えはわかったかな?瑛人くん」
「ま、真奈美さん…」
「退院おめでとう」
「答えがわからないんだ。だから一度君と会いたくて」
「うれしいわ、瑛人くんから会いたいだなんて」
「でもそれじゃあダメ」
「なんで?」
「少しはあなたの推理を聞かせて」
「僕が思ってることだけど、父さんを殺したのは、管理人と安田刑事だ」
「どうやって?理由は?」
「理由はフリーライターの資料にもあったけど、DVだと思う。母さんはここの町を知らないと言っていたけど、あの管理人と安田刑事とおそらく接点がある。そこで、買い物を理由に僕と沙夜を連れて行く。そのあとに安田刑事と管理人が家に入る」
「そんな簡単に入れる?」
「警察手帳と管理人…」
「僕たちが何か事件に巻き込まれたとか嘘をついて中に入ったんだろう」
「父さんは必死に争ったんだろう、その証拠に安田刑事は取っ組み合いになったときに傷でもできたのか、耳や手に切り傷のようなものが数ヶ所あったよ」
「すごい、瑛人くん、いつの間にそんなの観察してたんだ」
「で、取っ組み合いだけで殺すのはなかなか難しい、おそらくそこで管理人が麻酔薬か何かを注射したんだと思う」
「実はあのあと、事件現場をくまなく探したら、注射の針のようなものをみつけたんだ」
「なんだ、じゃあある程度犯人は検討ついてたんだ」
「そういうことになるね…でもどうしても信じられないのと共通点が見つけられなくてね、でもフリーライターの資料で段々とわかってきた」
「合格」
「えっ?」
「これ以上、ここで話してたらあなたのお母さんに聞かれるかもしれないわ」
「明日会える?」
「会える、いや会いたい」
「じゃあ、後でメールを送るね、じゃあね」
僕は部屋から出た。
沙夜がソファーに座り、母さんは料理をしている。
「誰かと電話でもしてた?」
「えっ…いや動画を観てたんだけど音量大きかったか」
「ううん、なんか声が聞こえたからてっきり電話かと」
「管理人さん、なんだって」
「定期点検ですって、このアパートも古いからって」
「そうなんだ、ちゃんと管理人の仕事もしてるんだね」
「失礼よ、お兄ちゃん」
明日、明日彼女に会えれば何かが変わる。
僕に会うまで絶対に殺されないでくれよ。真奈美さん…
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