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引っ越した町は悪に満ちている  作者: まなた
瑛人編
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殺人気

「うわぁぁぁぁ」

僕はガバッと体を起こした。


「お兄ちゃん、落ち着いて」


「うわぁ、さわるな、殺される、助けてくれ」


「お兄ちゃん」


「私、先生を呼んでくるわ」


騒ぎを聞き付けて看護師がやってくる。


「鎮静剤を投与しろ」

医者の声も聞こえる。


「助けてくれ、助けて」


「落ち着いて、落ち着いて」

沙夜の声だ。


「僕は…いったい」


「少し落ち着いたみたいね」

母さんが慌てた顔で僕をみる。


「ここは?僕はいったいなんでこんなところに?」


「ここは病院、お兄ちゃんは…」


「意識が戻ったってほんとですか」

ずかずかと警察らしき男が入っていた。


「まだ、取り調べは止めてください」

医者がそういうが警察はお構いなしに僕のところにきた。


「お前、相良真奈美がどこにいったか知っているな」


「ちょっと、あんた今そんなこときいたら」


「刑事さん、いいかげんにしてください」


沙夜と母さんが怒っている。

今、相良真奈美って言ったよな。


僕の頭がハンマーで殴られたような激痛が走る。


記憶の波が一気に押し寄せてくるような気持ちが悪い感じだ。


「うわぁぁぁぁぁ」


「お兄ちゃん」


「刑事さん、今すぐここを出てください、さもないと法的手段を取りますよ」

医者が怒り声をだして、刑事を外に出す。


「あああああ」


「瑛人、しっかりして、瑛人」


「んだよ!せっかく犯人の手がかりを聞けると思ったのに」


「彼はあの事件で精神的ショックをかなり受けています。おそらくあの事件の記憶もあるかわかりませんよ」


「はぁ?先生よ、そんなことあるのかよ」


「ありますよ、ショックが強すぎてそこの部分の記憶だけが欠落することなんて」


「なんとも都合のいい…」


「とにかく今は絶対安静です。取り調べはしばらくだめです」


「ちっ、わかりましたよ、いくぞ」

刑事は部下を引き連れて帰っていった。


「どうですか?」


「あ、先生、今眠りに着きました」


「よかった、しばらく事件のことを連想させるようなことはしないようにしましょう」


「わかってますよ、あの刑事がいけないんだ」


「そうね、あの刑事さん、ひどいわ」


「すいませんでした、我々も止められなくて」


「いいんですよ、ああいう人にはお仕置きが必要なんですよ」


「はは、お母さん怖いこといいますね」


「うふふ」




暗闇…なんだ。俺はどこにいるんだ。


そうだ、署に戻ろうとして運転していたら、いきなり、人が飛び出してきて…その後は…


「目が覚めた?」


「だ、だれだてめぇ」


「南川瑛人の母です」


「な、なんだとどう言うことだ」


「動いても無駄ですよ、感じませんか?両手がない感覚」


え、なんだと?あれ?指が動かない…


「仕方ありませんね、自分で確認してくださいな」

乱暴に目隠しを取られる。


「な、な、な」

俺の両手、両足が切断されて包帯で巻かれていた。


「今は麻酔をしているので痛みはそこまで感じません」


「な、なんでこんな」


「何でって、あなた今日、瑛人を苦しめたじゃない」


「そ、そんな理由で」


「じゅうぶんすぎる理由よ」


「そうだ、一緒に乗ってた刑事はどうした」

瑛人の母親はちらりと右をむく。


「あ、あ…」


人間としてのパーツが体から全てはずされた状態でそれは横たわっていた。


「彼もじゃまだから殺っちゃった。可愛そうにあなたのせいよ」


「な、何なんだよ、お前は」

俺は必死に逃げようとするが体は動かない


「だから、瑛人のお母さんよ」


「さあ、選んであなたの番よ、彼と同じようになるか、毒物で苦しむか、あそこの水溜まりに落として溺死するか」


「く、くそ」

ぺっ

恐ろしい殺人鬼の顔にめがけて唾をはいた。


殺人鬼は濡れた頬を拭う。


そして、顔を近づける。


「な、なにしやがる」


「ふふ、キスしてあげる」

殺人気は俺にキスをする舌が絡んだと思った時だった。


ブチブチブチ脳内に音がひびく。

一瞬で意識が飛びそうな衝撃が走った。


ぺっ

目の前の殺人気はぼとりと俺の舌を吐き出した


「があああ」


「あらあら、おしっこまで漏らしちゃってみっともない」

殺人気は俺の顔を両手でつかむと力一杯ひねった。

ゴキン


「ふぅ、力仕事は疲れるわね」


「案外あっさりと殺したんだな」


「だってこの人汚いんだもん」


「やれやれ、処分する身にもなってほしいものだね」


「仕方ないのよ、瑛人を守るため」


「そういえば、あの娘、生きていたんだってね」


「そうよ、高等部の生徒20人殺傷…頭が狂ってるとしか思えないわ」


「瑛人はよく無事だったな」


「そうね、でもまだみつかってないからね、気を引き締めて守らないと」


「こんなところにいて大丈夫なのか?」


「大丈夫よ、あの子が私と同じならあれだけ派手なことをやったあとは少し大人しくしているはずよ」


「お前さんは全然大人しくしてないけどな」


「あら、そうかしら。ふふふ」


「じゃあ、またよろしくね。私は瑛人のところにいってこないと」


「おやおや、人を殺したあとに息子に会いに行くとは…恐ろしいねぇ」


「ふふふふ」


お読みいただいてありがとうございます。ブックマークや、評価いただけるとうれしいです。1万文字目指して頑張ってます。

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