罠
「もう、2人してスマホに夢中でお母さん悲しいわ」
「お母さんにも入れてあげようか、電子書籍」
「あら、ほんと?」
「かして、スマホ」
「僕お風呂入ってくる」
僕はお風呂の中でもスマホで小説を読んでいた。
しばらくすると…
「お兄ちゃん、いつまで入っているのよ」
「え、そんなに入ってる?」
「1時間だよ、早くしてよ」
いつの間にそんなにたってたのか
「ごめん、ごめん。今出るよ」
「スマホ壊れるよ」
「あ、ああつい夢中になっちゃった」
「どこまで読んだの」
沙夜が覗き込む。
「え、これしか進んでないじゃん、ならさっさと出てよ」
ぶつぶつと文句を言いながら沙夜はお風呂に入っていった。
「母さんは、何読んでるの?」
「恋愛小説」
照れくさそうに言った。
「そ、そうなんだ」
「昔から好きなのよ」
僕は自分の部屋に戻って、また続きを読み始めた。
そして気づいたら眠りについていた…
「お兄ちゃん、起きて。遅刻するよ」
「ふぇ、今何時」
「もう、8時過ぎてるよ」
「え、うそ、起こしてくれよ」
「今起こしたでしょ、先にいくからね」
「ああ」
僕は慌てて、制服に着替えて、カバンを持つ…
あれ?カバンが…軽い。
僕は中身を見る。
資料がなくなっている…
やられた。何時だ、何時とられた
ああ、お風呂の時だ。
よかったよ、取られて
僕はニヤリと笑った。
本棚の辞書のケースから資料のコピーが出てきた。
母さんのことだから、僕の資料を見つけると思っていたからね。
思いどおりにはさせないよ…母さん
「瑛人、遅刻するわよ」
「うん」
僕は資料のコピーをカバンに入れて出掛けた。
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