探り会い
あの後悪戦苦闘しながら僕は電子書籍とやらをダウンロードして携帯小説を読むことができるようになった。
早速、沙夜にネタバレをされている作品を読み始めた。
主人公はごく普通の高校生。日常シーンから始まるが、事件はなかなか起きない…いつサイコパスになるんだ?それともサイコパスがでてくるのか?
犯人がサイコパスというオチとは聞いたけど、途中の話しは聞いてなかった。
それどころか普段小説を読まない僕には結構苦痛だった。
後ろからドンッと衝撃が走った。
「うわっ」
「歩きスマホはダメでしょ、お兄ちゃん」
「なんだ、沙夜か、今帰りか」
「なんだはないでしょ、なんだかんだはまってるじゃん、どこまで読んだの?」
「いやぁ、もう飽きてきた」
沙夜がスマホを覗き込んでくる。
「まだ、冒頭も冒頭じゃない、ちゃんと読みなさいよ」
「そうは、言ってもねぇ」
「ちゃんと最後まで読んだら感想教えてね」
「はいはい、がんばります」
2人で家に向かってあるいていると管理人のおじいさんと会った。
「おやおや、こんにちは」
「おじいさん、こんにちは」
「あ、こんにちは」
「なんだか久しぶりに会うねぇ」
「そうですね、いつぶりでしたかね」
「これからどこかいくんですか?」
沙夜にしては珍しくよく話しかけるな。
「買い物のだよ」
「そうなんですね、気をつけて」
「はっは、ありがとう」
僕たちはあっさりと別れた。
「気をつけてって、何を?」
「年寄りじゃん、色々危険があるでしょ」
「お前、もっと言い方考えた方がいいぞ」
「心配してるんだからマシだと思うよ」
「そうかなぁ」
気づいたら沙夜はスマホをいじり始めていた。
歩きスマホはダメだぞ。すっかり言いづらくなってしまった。
「わっ」
僕の背中にまた衝撃が走った。
「うわっ」
後ろを振り向くと母さんが立っていた。
「お帰りなさい、今日は二人一緒なのね」
「驚かさないでよ、うん、さっき会ってさ、母さんこそ何やってたの?」
母さんは両手の買い物の袋を持ち上げる。
「買い物、助かるわ、瑛人」
「はいはい」
僕は母さんから、買い物袋を受けとる。
「カバン」
「えっ」
「カバン重そうねって思っただけよ」
「あ、ああ宿題が多いからね」
「大変ね、高校生は」
僕たちは3人で歩いた。
しかし、この時にカバンのチェックをされているとは思ってもいなかった。
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