仲間割れ
次の日、僕はニュースを観て愕然とした。
「安斉山警察署刑事課内で署員数名が原因不明で亡くなった、1名の刑事が現在行方不明、この刑事が事件に関わっている可能性が高いと思われる」
ニュースには被害にあった刑事の氏名が読み上げられる。
どうやら、松田刑事が言っていた。新しい上司も含まれている。
松田刑事の名前は読み上げられない。
つまり彼は死んでいない。
何があったんだ。
「あらあら、怖いわね」
インターホンが何度も鳴らされる。
「あら、誰かしら」
「松田です」
「今開けるからお待ちなさい」
「松田とかいう刑事は生きてたんだね」
沙夜がいつの間にか後ろにいた。
「あ、ああそうみたいだな」
母さんと、松田刑事は外で話しているようだ。
松田刑事が大きな声を出しているが内容までは聞こえない。
しばらくして母さんが戻ってきた。
「大丈夫?」
沙夜が聞く。
「ええ、ひどく興奮してたわ。自分が犯人だって私に言われてもね」
「え、帰したの」
「自首するようには伝えたわ」
「大丈夫なのそれで」
「わからないわ、でも関わるのはごめんよ、そうは思わない」
確かにそうだ。
とりあえず、あなたたちは気をつけて学校に行ってきなさい。
「う、うん。母さんも松田が来ても部屋にいれちゃダメだよ」
「大丈夫よ」
「行ってきます」
僕と沙夜は学校に出掛けた。
目隠しをされた松田刑事が椅子に縛られている。
「何か言いたいことはあるかしら?」
「昨日の手土産をみんなに渡したらみんな泡を吹いて死んでいった。どういう事だ」
「あなたは何で食べなかったの?」
「あんた、俺も殺そうとしてたのか」
「だって、あんたがきたせいで瑛人は私にまた疑念を抱いたのよ、不用意な行動を取ったあなたがいけないの」
「刑事課全員で死ねばややこしくなかったのに、あなただけ生き延びて姿が消えたから容疑者扱いになってるわよ」
「ふざけるな、すぐに調べればお前が犯人だとわかるさ」
「どうかしら、あなた以外は死んだのよ。あの手土産を誰からもらったか、果たして警察にわかるかしら」
「俺が今までのことをすべて明かしてやるさ」
「よく考えたら目隠しいらないわね」
目隠しを外されたが目がぼやける。
しかし、目の前にいる人物が誰かはわかる。
南川早苗
そう、あの南川瑛人の母親。
「そうそう、さっきの続き。警察にはわからないわよ、だって全てを白状するあなたはここで死ぬのだから」
「ふ、ふざけるな。裏切るつもりか」
「やっぱり警察は信用できないってことよ。安田も自分の罪に耐えかねて遺書を残して自殺…あなたが遺書をすり替えてくれて助かったわ」
「そうだろう、だから俺を殺さないでくれよ」
「あなた、殺人現場に出向きすぎよ、決定打は昨日ね」
「あれは上司に言われて仕方がなかったんだ」
「だから、信用できないって言ってるのよ」
「ふざけるな、俺はあんたたちにどれだけ協力したと思っているんだ」
「甘い誘惑に自分から乗ったくせによく言うわね」
「でも、私の旦那を殺してくれてありがとう、さすがにあいつは若い人間じゃないと殺すのに苦労するからね」
「でも、1人殺したら楽しくなったんでしょ」
「あんたの旦那を殺したのは俺じゃない、暴れたのを押さえつけてあいつがとどめをさしたんだ」
早苗の蹴りが松田の脳を揺らす。
「あいつなんて言わないの」
「さぁ、選びなさい。撲殺、絞殺、毒殺」
「私は毒殺が楽でいいんだけど」
「ふざけるなぁ」
松田は椅子ごと立ち上がり早苗めがけて突進してきた。
それを華麗に避けて蹴りあげる。
「私は空手の有段者よ、甘く見ちゃダメ、もういいわ」
倒れている、松田めがけて拳が振るわれる。
何度も何度も生命が尽きるまで
「終わったかい」
「いたのなら手伝ってよ」
「彼に麻酔を打ったじゃないか、じゅうぶん手伝っただろう」
「まったくもう、じゃあ、あと始末はよろしくね」
「はいはい」
「ねぇ、結局こいつ、誰か殺したの?」
「事件を追っていたフリーライターを殺そうとしたけど、仕留めきれなかったよ」
「そう、やっぱり信用できないわね、意気地無しさん」
早苗はこときれた松田を踏んづける。
早苗は鼻唄を歌いながら部屋を出ていく。
「その手、瑛人にみられるなよ」
「大丈夫、じゃあねぇ~」
お読みいただいてありがとうございます。ブックマークや、評価いただけるとうれしいです。