沙夜と瑛人
私は小さい頃から他人に興味がなかった。
保育園、小学校、中学校…特に友達を作る気もなかったし、話しかけたり話しかけられるのも面倒だった。
中学になるとイジメっ子グループが絡んできたが、空手を習っていた私は相手をボコボコにしてやった。
お父さんとお兄ちゃんにはすごく怒られたけど。
でも、私が唯一興味を持てたのはお兄ちゃんだ。
お兄ちゃんは私をいつも守ってくれる。楽しい話を沢山してくれる。
私はお兄ちゃんにだけは心を開ける。
何で兄妹なのだろう?
何で兄弟は結婚しちゃいけないんだろう?
まだ、14の私が人生で一番の失敗はお兄ちゃんの妹に生まれたこと…
お兄ちゃんを酷い目に合わせた犯人はいつのまにか死んでいた。
これでもう、お兄ちゃんを狙うものはいなくなったのだろうか?
お兄ちゃんが事件に関わり続ける限り、危険からは逃げられないのかな。
お兄ちゃん、この事件から身を引いてよ。
お兄ちゃんがいなくなったら私悲しいよ。
私は包帯まみれの左手を見て思う。
あの時、私がスマホを持っててよかった。
お兄ちゃんがリハビリから帰ってきた。
「どうだった?」
「ああ、歩行訓練だったんだけど、こんなに歩けなくなってるとはね」
「そう、でも徐々によくなっているんでしょう?」
「うん、そうだね」
「ねぇ、お兄ちゃん」
「なんだい?」
「まだ、事件を解決したいと思ってる?」
沈黙が続く。
(答えを聞きたくない、お願いだからNOと言って)
「ああ、どうしても忘れられないんだ、僕はこの事件を…何度も何度も忘れて、家族3人でやり直そうと思っても、この事件の死神は僕を逃がしてくれないんだ」
「死神…」
「そう、死神だよ。僕を嘲笑うね。だからその死神を捕まえるんだ」
ニヤリと笑う兄の顔は普通ではなかった。
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