町に到着!
さて、準備も終わって、シリウスに名前も付けたとこだし、そろそろ人里に向けて出発しよう。
まずは今いる場所がどこなのかを確認しないとね。
「シリウス、ちょっとそこで待っててね」
そう言って新しく仲間になった狼のシリウスに言う。
シリウスは賢くて、こちらの言葉が理解できるのか「グァン!」と一声上げてお座りをした。
「『飛翔』」
魔法を使って空中に飛び上がる。
おお、本当に飛んでるよ!
やってみたかったんだよね~、『フライ』って言って空を飛ぶの。
上昇も下降も旋回も、速度の調節やバク宙だって思いのままだ。
人類が空に憧れたのも頷ける。
おっと、遊んでる場合じゃない。
高度を上げて複雑に絡まり合う木の枝の隙間を潜り抜け、森の上空へと躍り出る。
久し振りに青空を見た気がした。
新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込みながら、辺りを見渡す。
どうやらこの森はとてつもなく広いみたいで、地平線の彼方まで360°木の群れが蔓延っている。
まさに“樹海”という言葉が相応しいだろう。
それでも観察を続けると、緑の海の一角に、そこだけ木が一切生えていない場所を見つけることができた。
目を凝らすと建物のようなものが見える……つまり町!
ここから遠目で見た感じだと、どの家も木でできたたものがほとんどだった。
ともかくこれで野宿しないで済みそうだ。
上手くいけば熊と狼も売れるかもしれない。
地上に降りて、っとその前に――
――よし、用事も済ませたことだし、早速町へ行こう。
野原を走り木の間を通り抜け川を飛び越え、4時間くらい森の中を駆け巡る。
町に入るときの設定はもう考えてある。
・職業は流浪の旅人
・森を歩いてきてこの町にやって来た
・シリウスは旅の相棒
――完璧だ。
シリウスには敵対する人間以外には攻撃しないように言い聞かせてあるし、町に入っても大丈夫だろう。……多分。
一応、旅人感を出すために古びたローブを着ておこう。
顔や体型がわからないように、フード付きのブカブカのヤツを魔法で作り出す。
もちろん、くたびれた感じを出すために、裾のあたりをボロボロにするのも忘れない。
うん、どこからどう見ても旅人だね!
声も魔法で変えておく。
今のわたしは美少女だから、一応用心の為にこれくらいはしておかないと。
いざ、町へ!
◇
町の外周には石で組み立てられた壁があり、恐らくこれで野性動物やモンスターの侵入を防いでいるんだろう。
しばらく歩くと門のそばに詰所みたいなのがみえてきた。
そこから兵士っぽい青年が出てくる。
「そこのお前! ここの町に何の用だ!」
よかった、言葉は通じるみたいだ。
でもちょっと警戒されてる?
この格好は流石に怪しかったかな?
「私は旅人だ。森を通ってやって来た」
「そいつは冷酷餓狼じゃないのか!」
どうやら警戒されていたのはシリウスの方みたいだ。
しかし冷酷餓狼か。
シリウスの種族名、結構すごい名前だね。
「コイツはテイムしてあるから人は襲わない」
「本当にテイムしてあるのか?」
「本当だ。シリウス、お座り! お手! お代わり!」
口をポカンと開ける兵士。
シリウスの見事な芸に納得してくれたみたいだ。
「わ、分かった。もういい。一応フードを取ってくれるか?」
「了解した」
そう言ってフードを取る。
現れたのは目付きの悪い15歳ぐらいの黒髪の少年。
ふふん♪ こんなこともあろうかと魔法で別人の顔に見えるようにしてあるのだ!
「若いな、少年。町に入るには銅貨5枚だが払えるか?」
顔を見せたことで、さっきよりは兵士の態度が軟化した。
「現物で払うことは出来るか?」
そう言ってフードを被り直しながら、カバンから魔石(?)を取り出す。
町に入るのにお金がかかるかと思ってたので、ここに来るまでに狼のうち一匹から取り出しておいた。
「かなりの等級の魔石だな。白金級の冒険者が狩ってくるレベルじゃないか」
「白金級?」
「階級を知らないのか? 冒険者にはいくつかのランクから成り立ってるんだ。その中でも白金級と言えば一流の冒険者だぜ」
ほう、冒険者!
今の話しから詳しいことまではわからないけど、ランクがアルファベットじゃないのは高ポイントだ!
まあ、金属でランクを決めるのが嫌いな人も居るけど。
「オリハルコン=真鍮だろ!」とか。
いいじゃない、真鍮じゃないオリハルコンがあっても!
ダイヤモンドだって発見当初は加工ができないクズ石で、そこら辺の石ころと同じ価値だったんだよ!
オリハルコンはオリハルコンに非ず。
ファンタジーに登場するのは、オリハルコンの名前が付けられた全く別の超物質です。
ココ大事!!
「折角だしこの機会に登録していけよ。入市税は大体の場所は免除されるし、緊急時に召集されたりするのに目を瞑ればお前なら稼げるだろうぜ」
やはり異世界と言えば冒険者だよね。
町に入ったら早速登録しに行こう。
「分かった。どこへ行けばいい?」
「門を潜って大通りを真っ直ぐ行くと3階建ての大きい建物がある。そこがギルドだ。赤い屋根だし直ぐ見つかるぜ」
「そうすることにする」
「ちょっと待て、魔石の釣りがある。それと証明札だ。ギルドでお前と魔物の登録をしたら受付に渡してくれ」
そう言って大きい銅貨9枚と小さい銅貨5枚に木の札を手渡された。
最小額の硬貨は小さい銅貨なのかな?
「手持ちの金が少ないんだが、これを細かくしてくれるか? 小銭があれば多めに欲しい」
「大銅貨二枚なら銅貨20枚だが、鉄貨とかも要るのか?」
「ああ、旅だとかさ張るから前の町を出るときに使ったんだよ。銅貨20枚の内2枚も細かくしてくれ」
「旅も面倒なんだな。ほら、銅貨18枚と大鉄貨18枚、それと鉄貨20枚。これでいいか?」
ふむ、鉄貨が10円ぐらいのかな?
そうすると今の狼の魔石は10万くらいの価値と考えれば、兵士の言っていた「白金級と言えば一流の冒険者」と言う言葉にも頷ける、のかな?
「ありがとう。助かった」
「おう!余計なお節介かもりれんがはスリに気を付けろよ」
兵士と別れてわたしは町の門を潜った――
愛「変装はした。旅人と答えれば怪しまれないず!」
シリウス&町の兵士「「いやいや、どう考えても怪しい」」




