3-23.『夢幻魔法』
最近は調子よかったけど、もうそろそろ戦闘シーンに入るから詰まりそう
「ボクたち、この世界に生まれた人間は魔法が使えるようにできている。それこそ、魔法が使えるように身体が作られているとかじゃなくて、魂レベルで魔法の扱い方が刻まれているんだ」
魂レベル……それって本能とか?
「わたしには分からない感覚ってのは何?」
「キミの場合は転生者だからね。身体はこっちのものだけど魂はあっちの世界のものって状態で、かなりのレアケースなんだ」
「その言い方だと、転生者以外の形でこの世界に来た異世界人はいるんだ?」
「いるよ。例えば――」
そう言うと、ロキはわたしの持っていた本――『魔と魂魄と精神の執行者』を指差した。
「その本を書いたのはボクの親友でね。彼――タイガは召喚者としてこの世界に来たんだよ」
ロキの親友はタイガって言うみたいだ。
名前からして日本人かな?
それにしても召喚者か。
召喚っていうくらいだから、やっぱり勇者召喚とかされたのかな?
「言っておくけど、キミが思っているだろう勇者召喚とかで呼ばれたんじゃないからね?」
「えっ? じゃあ、どんな感じで呼ばれたの?」
「奴隷だよ。召喚された人は強大な力を持つから、その力を使って戦争に勝とうとしたんだ」
うっわ、最悪のパターンじゃん。
ファンタジー世界まで来て戦争の駒とか、そんな夢の欠片もない異世界生活なんて絶対に嫌だね。
「タイガの居た世界にはマナが無かったから、召喚された際にこちらの環境に適合するために多くのマナを取り込むことになる。辛かっただろうよ。彼曰く、『破裂する寸前まで大量に水を入れ続けられる風船の気分だった』らしい」
例えが酷いし、生々しすぎる。
つまり、一歩間違えれば破裂――死んでたかもしれないってことでしょ?
よかったー、異世界召喚なんてされなくて。
って、ちょっと待て。
「その召喚って今も続いてるの?」
「その点は大丈夫。召喚に必要な魔方陣はボクたちが責任を持って国ごと滅ぼしておいたから」
うわぁ……。
ロキって意外と過激派だな。
「そんな引かないでくれるかな? よく考えてくれ、他の世界から連れてきた人間を戦争の駒にする様な国だよ? そんな国がまともな政治を行っていると思うかい?」
「言われてみれば」
ロキの語り口調から察するに、上の方も相等腐敗していたんだろう。
「そう言えば『ロキ』って名前は偽名?」
「いや、本名だよ。前の名前を捨てたボクにタイガが付けてくれたものさ」
名前を捨てるなんて並大抵のことじゃないし、そこに至るまでに面白いエピソードがありそうだけど、事が事だけに気軽に聞いちゃいけない感じがするから止めておこう。
それにしても『ロキ』か。
北欧神話だと他の神々を引っかき回したり問題行動を起こしたりする神だったけど、トリックスターって異名だったり底が見えない感じは確かにぴったりな気がする。
「そのタイガってどんな人だった?」
「面白い男だったよ。向こうの世界の『マンガ』や『アニメ』の話しをよくしてくれてね。それらを基にして色々なものを作った。さっきキミの魔法を躱した『空間魔法』、壊れた家具だったりを直した『錬金術』……他にも『銃』や『魔剣』も作ったな」
昔の記憶を探りながら語るロキは、とても懐かしそうで、また楽しそうにしていた。
「話しが逸れてしまったね。結論から言うと、『魔法』はこの世界に元々根付いていたもので、『魔術』はボクとタイガが作ったものなんだ」
「結局のところ、『空間魔法』も『魔法』って付くんだし、どっちも『魔術』も『魔法』も同じなんじゃないの?」
「この2つは魚が泳ぐことと鳥が飛ぶことくらい違うよ。仮に、一般的に『魔法』と呼ばれているものを『原初魔法』と呼ぶとすると、『空間魔法』なんかはタイガの使っていた“本物の魔法”が基になってできている。存在の在り方がそもそも違うんだ」
「“本物の魔法”? それじゃあ、『原初魔法』は偽物ってこと?」
ちょっと不思議に思ったから質問してみた。
話を聞いていても、今のところ『魔法』と『魔術』にはそれほど違いはないように思える。
「そう、『原初魔法』は偽物さ。『原初魔法』と“本物の魔法”にはもう一つ違いがあるんだけど、気付いているかい?」
「マナのロスが少ないところ?」
「そう。人の身でありながら、生命の根幹とも呼べるマナを操る――それは正に奇跡そのものだ」
何か大げさな気がする。
「さすがに奇跡は言い過ぎじゃないの?」
「いいや、誇張でも大袈裟でもないよ。ボクは『魔術』が使えるけど、それは模倣に過ぎない。『魔術』はタイガの“本当の魔法”の足元にも及ばないのさ。それはキミ自身が一番よく分かっていると思うよ?」
「タイガは自分が使っていた“本物の魔法”に名前を付けた。
1を100に
不可能を可能に
夢、幻を現実に
時に敵を倒す矛となり
時に仲間を守る盾となる
絶望の闇を払う希望の光――
――『夢幻魔法』――」
その時、ふと何かが軋むような音がした。
「時間だね」
ロキが宙を見上げる。
その視線の先には黒い亀裂が走っていた。
「時間って?」
「この世界のタイムリミットさ。ここはボクが『空間魔術』を使って創造した世界で、ボク以外の人間は長時間存在することができないんだよ」
おい!
それは聞き捨てならない!
「わたしは『空間魔術』使えないんだけど!?」
「それの点は心配ないよ。キミがこの世界から弾かれても、元いた大通りに帰ることができるからね」
よかった。
時空の狭間に置いてきぼり、みたいな展開になるんじゃないかとヒヤヒヤしたよ。
「本当はもっと話したいことがあったんだけど、最後にこれだけは言わせてくれ」
ロキが話している間にも、宙にできた亀裂は、わたしを中心に増えていく。
「転生者の存在はかなりイレギュラーなものだ。恐らく、この先には数多くのトラブルや困難が待ち受けているはずだ」
空間の軋む音は次第に大きくなっていく。
「そして、タイガと同じ魔法を持つキミの未来に、幸多からんことを――」
ロキが言葉を発したが最後、ガラスが割れるような音と共に周囲の景色が砕け散り、気付いたときには神隠しに遭った王都の通りへと戻っていた
設定なんて後付けで考えればよかった…
ところどころ破綻してそう




