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夢幻泡影のカレイド・マジック  作者: 匿名Xさん
第三章 ~燦たる英雄のアンビバレンス~
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3-20.『帰り道』

サブタイトルからお察しの通り、またバトル描写に入れませんでした

その前に本タイトルの伏線について、ちょっと触れて行きたいと思います



 ……どうしてこうなった?


 目の前には死屍累々といった体の他の参加者たち。


 地面に蹲って怯えたり、意識を失って倒れたり、一部の人は発狂して喚いたりしている。


 そして、これらの人に対処するため大会の救護係的な人たちが慌ただしく動いている。


 気絶した人は担架で運び、逃げ惑う人は取り押さえて気付け薬を飲ませたりと大忙しだ。


 わたしが使ったのは戦技でも魔法でもない。


 単にマナを相手へぶつけるだけの威圧だ。


 昨日、フェルアにマナの操作方法を教えたから実践での活用法も見せてあげようと思ってたんだけど、何か加減を間違えたみたい。テヘッ☆


 だからね、反省してるから殺気を飛ばしてくるのは勘弁して欲しい。


 わたしの後ろ、観客席の最後列にある通路で試合を観戦していたフェルアが、さっきから凄い形相で睨んできているのが分かる。


 おかしいな、昨日ははマナの初歩的な動かし方を教えただけなのに。


 なんでもう応用できているんだろう?


 シオン先生、優秀な教え子を持てて幸せです!


「し、試合終了! 勝者、参加者番号574番、シオン選手!」

「「「うおおおぉぉぉぉッッッ!!!」」」


 うわ、びっくりした!


 審判がわたしの勝利を宣言した途端に観客たちが一斉に歓声を上げる。


 まあ、これだけの人たちからわたしの勝利が称えられるというのも悪い気分じゃない。


 ちょっと拳を掲げてみたら割れんばかりの拍手が巻き起こる。


 それと同時に視線の圧も強くなる……。


 うん、お遊びはこれくらいにして、さっさと退場することにしよう。


 わたしは足早にリングを後にした――






◇◇◇






「それでは、大会本戦についての注意事項を説明をします」


 受付に行くと係員のお姉さんに呼び止められて、明日から行われる本戦の説明を受けた。


「本戦は武器あり、魔法ありの一対一による勝ち抜き戦となります。降参、場外、審判による試合続行不可と判断された方が敗者となり、勝者は次の試合に進むことができます」


 予選がバトルロワイヤルだったのに対して、本戦は一対一のトーナメント戦になったくらいで、大筋のルールは変わっていないみたいだ。


「対戦相手はどうなってるの?」

「試合の組み合わせは明日、当日に発表されます」


 それじゃあ、1回戦でアランとかリュウさんとかに当たるかもしれないってことか。


 わたし的には決勝で知人と当たるパターンが激アツでいいと思う。


 他に聞くこともなかったから受付のお姉さんにお礼を言って振り返るとフェルアがいた。


「シオン、私、『あまり無茶なことはしないで』っていったわよね?」


 やばっ! フェルアのこと忘れてた!


「そ、そんなこと言ったかな~?」

「言った! それにあなたも『分かった』って言った!」


 全ッ然、覚えてない。


 昨日の夜寝るときに今日の予定を話し合ったときかな? それとも今日、会場に来る道の途中で話したときだったっけ?


 ダメだ、まったく思い出せない。


「隣で見てたザラさんも苦笑いだったわよ。その時は私が謝ったけど、後であなたも誤りに行きなさいよ」

「それは……ゴメン」


 つまり、フェルアがザラさんに謝っている中、当の本人であるわたしは呑気に観客にアピールしていたと。


 それは……今のフェルアみたいにイラッってくるのも当然の反応だわ。



「それくらいにしといたらどうや? 嬢ちゃん」


 怒りの収まらない様子のフェルアだったが、彼女に声を掛ける人が現われた。


「試合言うても結局は戦いや、ザラの婆さんもそこんとこはよう分かっとるさかいな」

「リュウの言う通りです。徒に他の参加者に対して危害を加える意思がないのであれば、戦闘が荒くなることはやむを得ません」


 人混みを割るようにして現われたのは、オリハルコン級冒険者のリュウさんとギルドマスターのザラさんだった。


 突然の大会優勝候補と冒険者ギルドのトップの登場に、周りにいた観客たちがざわつく。


「あー、ザラさん。さっきの試合は――」

「その事でしたら貴女が謝る必要はありません。大会に参加する者たちもある程度怪我を負うことは承知の上ですし、その傷を癒やすことは私たち運営の仕事です」

「せやで? ほんまに悪い思うとるなら、いい試合で返すのが礼儀や」


 謝ろうとしたら逆に励まされてしまった。


 2人とも、試合に対してスポーツマンシップのような考え方を持っているみたいだ。


「ありがとう。ザラさん、リュウさん」

「それと、俺には『さん』付けせんでええぞ。シオンは恩人やからな!」

「私にもそこまで固くならなくてよいですよ。リュウの様にフランク過ぎるのも考えものですが」


 わたし的にはそうは思っていなかったけど、言葉遣いが固いと言われてしまった。


 まあ、こっちの冒険者は荒っぽい人が多いから、相対的にわたしの口調が丁寧すぎると感じるのだと思うけど。


 その後は、リュウさん改めリュウから「本戦を楽しみにしている」、ザラさんからは「体調に気をつけて万全のパフォーマンスを発揮できるように」と言われ、2人とは別れた。






◆◆◆






「2人とも、いい人だったわね」

「そうだね」


 試合会場からの帰り道、シオンは露店で売っていたサンドイッチを食べながらフェルアと話していた。


 シオンは控え室で待機していた時間が長かったので、専らフェルアが見ていた試合についてやザラとの会話についてが話題に上がった。


「それにしても、あなたが試合でやったのは何? 気付いたら他の選手が倒れていたのだけど」

「ああ、あれは昨日やってたヤツの応用だよ。もうちょっとフェルアのマナ操作が上手になったら教えてあげる」


 シオンはフェルアからの質問に返しながら、新しく買った焼き鳥に(かぶ)り付く。


 そのいい食べっぷりに「それ以上食べると夕飯が入らなくなるわよ」とフェルアが注意する。


 結局、食べかけの串はシリウスのお腹の中に入ることとなった。



 日が傾き始め、薄らと橙色に色づく空。



「今日は剣を使っていなかったけど、明日からの本戦は魔法主体でいくの?」

「――」

「シオン?」


 しかし、彼女の問い掛けに返ってくるはずの声はない。


 周囲を見渡すが、雑踏の中にシオンの姿は確認できなかった。


「シオン! シオン!!」

「ヴァン!」


 フェルアとシリウスはシオンを探したが、終に日が暮れても彼女を見つけることはできなかった



全く手を付けてませんが、頑張って明日も投稿、少なくとも土曜に投稿できるといいな……

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