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夢幻泡影のカレイド・マジック  作者: 匿名Xさん
第三章 ~燦たる英雄のアンビバレンス~
79/96

3-15.5 幕間:『メリッサ・リード』

お久しぶりです、そして遅れてスミマセン。

私事ですが、この作品の総合評価が400ptになりました! 嬉しい!

これからも応援よろしくお願いします!



「会長はここまで見込んで朧龍の羽衣(アレ)を渡したのですか?」


 メリッサの付き人が彼女に対して問い掛ける。


 その視線の先にあるテーブルには、精緻な紋様が施された10本のガラスでできた小瓶と、宝石の様な艶を持った紅と橙に輝く2つの果実が置かれている。


 ビンの中に入っているのはポーション。


 しかし、一般的に広く売られているポーションとは訳が違う。


「一度だけ、この国のオークションで見たことがあります。このポーションはそこらで売っているような下級や中級ではない、本物の上級ポーションです」


――上級ポーション


 一滴で万病を癒やし致命傷すら塞いでみせ、小瓶一本もあれば欠損した部位を復元させることができる、文字通りの魔法の薬(ポーション)


 通常のポーションであれば、薬草の絞り汁にその他、薬用効果のある木の実や草の根、魔石の粉末などを加えてマナを流し込んだものである。


 その見た目はお世辞にも良いとは言えず、一度でも口に入れたことがある者は二度と使いたいとは思わないだろう。


 それがどうであろうか。


 今、目の前にあるポーション(それ)は既存のものとは似ても似つかない、というよりはむしろ、全くの別物であると表現するのが正しいだろう。


 透き通った薄緑色の液体は淡い虹色に発光しており、魔法を使う才能のない者でも感じ取れそうなほどマナに満ちあふれている。


 それが10本。


 ここにある上級ポーションだけで小国の国家予算にも迫るほどの価値がある。


「これだけ代物だから間違いようがないけど、一応後で鑑定証を発行してくれる?」

「承知しました」


 しかし、万能薬とも呼べる上級ポーションの製法は人族の間では断絶しており、作ることができる者は悠久の時を生きるハイ・エルフや前人未踏の秘境に住む竜人族などのごく一握りである。


 よって、一般的に出回っているものはダンジョン内部で稀に発見されるものであり、全てが大国のオークションにかけられるため、相場は一本およそ金貨数十枚といわれている。


 ともすれば必然的に上級ポーションと偽って効能の低い中級ポーションやただの飲み薬を売るが現われるので、紛い物を見分けるための専用の指示薬がある。


「それと、こっちの果実の方も鑑定証を発行してくれないかしら?」

「こちらの方は存じ上げませんが、それほどの価値があるものなのですか?」

「だってこれは紅血林檎(ルージュ・マルス)神聖蜜柑(ホーリー・シトラス)ですもの」

「まさか!」

「私も驚いたわ。まさかこんなものを商う日が来ようとは思いもしなかったもの」


 普段は無口で無愛想な付き人が目を丸くするの傍目に、メリッサはとても愉快な様子でころころと笑う。


 だが、彼女が驚くのも無理はない。


 紅血林檎(ルージュ・マルス)神聖蜜柑(ホーリー・シトラス)は、どちらもマナの濃度の高い魔物の領域にしか生息しておらず、運良く見つけられたとしても、そこから無事に帰ることができる保障はない。


 豊富な栄養を含んだ果肉は得も言われぬ極上の味がするとされ、一つ食べれば数十歳若返るとまでいわれている。


 そのような幻の果実が人の前に姿を見せたのは50年も前の話であり、当時オークションにかけられた神聖蜜柑(ホーリー・シトラス)は競り合いの末、白金貨100枚で落札されたという過去がある。


「この様なものを彼女はどこで手に入れたのでしょうか?」

「大方『開闢の樹海』の最深部にでも行ったんじゃないかしら?」

「『開闢の樹海』……あの、魔王も恐れると言われる魔境ですか」

「あら、何も不思議なことではないでしょう? あの子は正真正銘のオリハルコン級冒険者だもの」


 そう、これら一つ入手するだけでもかなりの困難を極めるものは全て、たった1人の少女――シオンが置いていったものだ。


 リード商会は一週間後に開かれるオークションの運営を担う商会の一つであり、はポーション5本と紅血林檎(ルージュ・マルス)は出品をするために、残りのポーションと神聖蜜柑ホーリー・シトラスは朧龍の羽衣の謝礼として渡していった。


「いずれは彼女に専属契約の話を持ちかけるお積もりで?」

「それもいいかもしれないけれど、今はお得意様として接していきましょう」


 付き人の問いに対しメリッサが返答する。


「? いつもの会長ならば、真っ先に手元に置こうとする人材だと思うのですが?」


 返ってきた言葉に疑問を感じた付き人が新たな質問を投げかけた。


 商会にとっての冒険者は、工房や取引先と同じほど、もしくはそれ以上に重要な存在となる。


 用心棒、商隊の護衛、宣伝など、名の通った冒険者を雇うことで得られるメリットは多岐に渡る。


 その点で言えば、新進気鋭の冒険者で確かな実績を持つシオンは是非とも囲っておきたい存在であるはずだ。



「そうね……懐かしかったからかしら?」

「懐かしい、ですか?」


 少し考えて口を開いたメリッサの表情は、どことなく憂いを帯びていた。


「さあ、この話はお終い。オークションの出品リストを作り直すわよ」

「順番はどうなさいますか?」

「ポーションは1から10番。締めは紅血林檎ルージュ・マルス神聖蜜柑ホーリー・シトラスにして頂戴。もちろん、謳い文句は50年ぶりの幻の果実をプッシュしてね」

「承知しました」


 保管用のマジックバックを取りに部屋を出ていく付き人。


「シオン……。花言葉は『追憶』。全く、皮肉なものね」


 窓際に近づいたメリッサは、店を出て行く2人の少女たちの後ろ姿を眺めていた。



バトル…戦い…そろそろ戦闘シーンが書きたい!

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