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夢幻泡影のカレイド・マジック  作者: 匿名Xさん
第三章 ~燦たる英雄のアンビバレンス~
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3-15.朧龍の羽衣

ブクマ、評価、ありがとうございます!

それと、前回から時間が空いてゴメンなさい(≧Д≦)



「シオン様のオリハルコン級冒険者への昇格、心からお喜び申し上げますわ」


 とっても良い笑顔をしたメリッサさんが、わたしのオリハルコン級への昇格を祝ってくれた。


 ってか、昇格したの昨日なんですけど?


「情報早くない?」

「ふふっ、商人にとっての情報は冒険者の剣や鎧のようなものですわ」


 攻撃手段()にもなれば防御手段()としても使えるってことか。


 怖いわ~。


 アンガルの街で初めて会ったときから、メリッサさんはやり手だなとは思ってたけど、さすがに王国一の商人だとは予想はできなかったよ。


「それで? 誉れ高きリード商会のトップがわたしに何の用?」


 営業スマイルを崩さないメリッサさんに問い掛ける。


 いくらわたしが最上位の冒険者だとしても、ぽっと出のいかにも弱そうな小娘と関わろうとする理由がわからない。


「簡単に言えば人脈作りの一環です」

「人脈作り?」

「ええ。数多のゴーレムを操りスタンピードを鎮め、さらには人の身で禍災級の魔物を相手取る。これだけの功績を挙げた人物と交流を持ちたいと思うのは、商人として当然のことですわ」


 うげっ! そこまで調べられてるの!?


 リヴァレンの街でスタンピードが起きたのは1ヶ月前だけど、ここまで調べられる?


 基本この世界の情報は旅人や冒険者の噂話ぐらいでしょ?


 それが伝わるのだって何ヶ月、あるいは何年もかかったりすることがザラなのに情報が正確すぎ。


 商人、怖い。


「で? わたしと交流持ってどうするつもり?」

「何も取って喰おうなんて思ってはいませんよ。この場を用意した目的は先行投資です」


 メリッサさんが目配せをすると、お付きの人がケースのようなものをテーブルに置いた。


 それにしても、このケースは何だろう?


 幅は両手を広げたぐらいなのに厚みのない立方体だ。


 一体何が入っているんだろうと思っていたら、メリッサさんがスーツの胸ポケットから取り出した鍵を使ってケースを開ける。


 その中に納められていたのは――


「白い布?」

「これは『朧龍の羽衣』と呼ばれるものです」


 羽衣ってかぐや姫が月に帰るときのアレ?


 言われてみればそんな感じがしなくもない。


 白いシルクの布みたいだけど、よく見ると織り目がないし、龍の皮を加工したものなのかな?


「こちらをシオン様に差し上げます」

「差し上げますって言われても、装飾品はもらっても付けないんだけど?」

「いいえ。こちらは装飾品ではなく、一種のローブです」

「どう見てもローブには見えないけど……」

「マナを流し込めば分かりますわ」


 メリッサさんが差し出す羽衣を受け取る。


――全く重さを感じない


 それだけしゃなくて触れている感覚すらも感じないし、まるで空気でも掴んでいるみたいだ。


 もう少し不思議な感触を楽しんでいたいけど、今はマナを流すことに専念しよう。


 あれ? 生地が伸びてきてる?


 はじめは目の錯覚かと思ったけど、マナを流し込むにつれて羽衣の幅が広くなっていって、数秒もすれば白い輝きを放つローブの形に変化していた。


「このローブは防水性、耐火性、防刃性、衝撃吸収、各種魔法耐性、自動再生を備えています」

「ちょっと試してみてもいい」

「ええ、どうぞ」


 メリッサさんに許可をもらったので、ローブに火魔法の『火炎(フレイム)』を近づけてみる。


 『火炎』は最下級魔法だけど、範囲を絞ってマナを多めに込めてみたから中級魔法くらいの威力は出ているはずだ。


 にも関わらず、ローブは燃えるどころか焦げ跡一つとしてついていない。


 この感じだと上級魔法でも耐えられそうだ。


「ホントにこんなものもらっちゃっていいの?」

「はい、シオン様のオリハルコン級冒険者への昇格祝いです」

「でも『朧龍』って名前からして素材は龍なんでしょ? すごく貴重なものなんじゃない?」

「価値を付けるならば、領地の2つや3つは買える代物ですね」


 そんなにするんだ。


 お金のことに敏感なフェルアが隣でギョッとしている。


「そんなに高いものだったら、わたしプレゼントする以外にも使い道はあるんじゃないの?」

「確かにあるかもしれませんが、この『朧龍の羽衣』は蒐集家以外には無価値なものなのです」

「どうして?」


 龍の素材を使った防具なんて、こっちの冒険者なら喉から手が出るくらいの代物だと思う。


 魔物を狩るときに良質な防具があれば、それだけ依頼の成功率は高くなるし、怪我をするリスクだって抑えられる。いいこと尽くめなはずだ。


「先程、シオン様が羽衣をローブに変化させましたよね? 本来、その形態にするためには、ミスリル級やアダマンタイト級の魔術師10人が全力でマナを込める必要があります」

「ああ、燃費が悪いんだ」

「はい。しかも、膨大なマナを込めたにも関わらず、ローブの形を維持できたのはたった数分程度でした。無論、羽衣の形態でも防具としては成り立ちますが、革鎧程度の性能しかありません」


 魔術師がありったけのマナを込めても、たった数分しか効果がなかったら実践だと使い物にならないよね。


 第一、魔法使いがマナを切らしてどう戦うんだって話だし。


 たしかに、こんなガラクタはコレクターぐらいしか欲しがらない。


「じゃあ、これはありがたくもらっておくことにするよ」

「はい、そうして頂けるとこちらとしても嬉しいですわ」


 わたしは手に持っている『朧龍の羽衣』改め『朧龍のローブ』に袖を通す。


 サイズは使用者に合わせて変化するのか、ちょっと大きめだと思ったローブは不思議としっくりくる着心地だった。



もっと投稿したいと思っているんですが、最近は色々と忙しくてまとまった時間が取れませんでした。これから二、三ヶ月、下手するともう少し忙しい期間が続きそうで投稿頻度が落ちますが、温かい心で次の投稿を待ってもらえると嬉しいです。

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