3-10.宿屋?というよりホテル
読んでくれてありがとう!
「ようこそお越し下さいました」
「「「ようこそお越し下さいました」」」
おぉ……スゴい歓待だ。
ちょっと遅めの昼食を終え、わたしたちはヴァーノルドと別れて今日泊まる宿に来たんだけど、メインロビーに入るなり手厚い歓迎を受けてしまった。
わたしはRPG風の宿屋を想像していたんだけど、これはどっちかっていうとホテルだよね。
例の感謝状に同封されていた宿泊券、その指定されていた場所がここ『女神の腕』なんだけど、一発で高級ホテルだって分かる見た目をしている。
まず始めに、この宿があるのって貴族や豪商とかの邸宅のある辺りにある。
つまり、高級住宅街的なやつ。
何でも王城に近づくにつれてそれなりの身分が要求されるらしく、上流階級の人たちが集るだけあってグレードも必然的に高いものを要求される。
現代のビジネスホテルとかと違って7階建てなんだけど、こっちの建物基準だと飛び抜けて高いし、それに一つ一つの部屋の窓が透き通ったガラスで出来ていた。
今いるのは一階のラウンジみたいなところなんだけど、足元には高そうな紅いカーペットが敷いてあって、天上からは巨大なシャンデリアがぶら下がっていてフロア全体を黄金色に染め上げている。
……不謹慎ながら予告殺人でも起きそうだなと思ってしまった。
「私、当ホテルの支配人をしています、アーネストと申します。シオン様とフェルア様ですね? お部屋ご用意は出来ております」
「ありがとう。それじゃあ、早速だけど部屋に案内してもらっていいかな? それと、シリウスも連れて行っていい?」
「はい、従魔は部屋にお連れいただいて構いません。その他ご要望があればスタッフにお申し付け下さい。それではリーン、お客様を案内して差し上げて下さい」
「分かりました、支配人。それではシオン様、フェルア様、こちらへ」
支配人のアーネストさんは燕尾服が似合うザ・紳士って感じの人だ。
白髪で顔のシワも多いけど、腰は曲がってなくて姿勢はいいし、お辞儀とか話し方とか細かい所作がカッコいい。
なかなか味のあるキャラクターだけど、惜しむらくは名前がセバスチャンじゃないことか。
リーンさんの方は……うん、普通のスタッフだ。
スーツっぽい黒い制服に身を包み、茶髪をシニョンにしている美人さんだけど、取り立てて目立った特徴はない。わたしの語彙力がないとも言う。
彼女に案内されてわたしたちに用意された部屋へと向かう。
取り敢えず、こんなところに泊まる機会なんて滅多にないんだから、貴重な経験が出来たと思って楽しむことにしよう。
◇
「あ~、久し振りのベッドだ~っ。もうこのまま寝てもいいかも」
あてがわれた部屋に着きリーンさんが退出したのを見計らって、わたしは真っ白でふかふかそうなベッドにダイブした。
ほんと、この沈み込むような感触がやみつきになる。
大抵の宿のベッドって高反発だから、たまに起きたときに身体がだるかったりするんだよね。
それにしてもここに来る途中、魔石を原動力にするエレベーターみたいな魔道具やエスカレーターみたいな魔道具があるのには驚いたよ。流石にテレポートの魔道具はなかったけど。
「こら、そんな格好で寝ると服にシワができちゃうでしょ?」
「そうだ! シワで思い出したけど服を買わないとね。わたしたちの服、TPOに合ってないから」
そう、わたしたちが着ている服はここだとすっごい浮いている。
ラウンジで見た限りだと誰も彼もタキシードだったりドレスだったりのフォーマルなものを着ている。
その他の人もジャケットっぽいもの、品の良いワンピースみたいなものみたいなセミフォーマルな衣装を着ていたから、最低でもそれくらいの公共の場に出ても恥ずかしくない衣装が必要だよね。
そう言えばわたし、リード商会のVIPカード持ってるんだっけ。
ちょっと前にあったアンガルの街での事件。あれのお詫びとしてもらったんだけど、折角だからこの機会に使おう。
「お金、足りるかしら? もしもの時はギルドの依頼で稼げば」
「あ~、フェルア? 多分、それ無理」
「どうして?」
「だって王都の依頼、報酬安いもん」
王都の周辺に生息する魔物は騎士団が定期的に討伐するからほとんどいない。
となると、必然的に冒険者ギルドに舞い込んでくる依頼は報酬の安い住民からの依頼になる。お使い系クエストの報酬っておこづかい程度だからね。
まあ、報酬の高いのもあるんだけど王都から離れた街でのものだったり、フェルアだとランク的に受けられない。
「依頼の報酬ってそんなに安いの?」
「銀級くらいになればある程度稼げると思うけど、今のフェルアのランクは鋼級だからね」
「冒険者という職業を甘く見ていたわ……」
「わたしが払うから大丈夫だよ?」
「お願いするわ」
うなだれるフェルアを慰める。
大丈夫、失敗は誰にでもあるよ。
フェルア「まさかシオンみたいな失敗をするなんて……」
シオン「ひどくない?」




