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夢幻泡影のカレイド・マジック  作者: 匿名Xさん
第三章 ~燦たる英雄のアンビバレンス~
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3-9.終焉級

70話……年末までに80話いけるかな?



◆◆◆



 そこには確かに国があった。


 王を中心とした政治を敷いており、高い技術力を以て作られた魔道具を戦に用い、周辺国を併合していった。


 豊かな国土、精強な軍、飢えぬ日々……人々は夢のような生活を享受していた。


 だが、その繁栄も一夜にして潰える。


 天が裂け、大地が割れ、日が昇る頃には全てが消え失せた。


 国の存在した地はマナと邪気で満ちあふれ、周囲から魔物が集まり、また、新たな魔物が誕生するようになる。


 そこはいつしか魔物の始まりの地、『開闢の樹海』と呼ばれるようになった。

 


◆◆◆




「これが私の知りえる伝承の全てです。シオンさん、貴女はこの話をどう思いますか?」


 短い語りだったが、ザラさんの威厳に満ちあふれた声と抑揚を付けた話し方は、当時の光景を思い起こさせるには十分だった。


――天が裂け、大地が割れ、全てが消え失せる


 聞く限りだと相当な範囲に影響が出てるから、魔法関係の何かが関係しているんだろうとは思う。


 だけど――


「どうって言われても、単に国が滅びただけじゃないの? もしかすると魔法の実験に失敗したとか。これだけだと本当に終焉級なんて魔物がいたかどうか分からなくない? そもそも終焉級って存在が確認されてない、仮定の危険度じゃないの?」


 冒険者になったときに受付のお姉さんから聞いた話を思い出しながら、疑問に思ったことを聞いてみる。


「いいえ、終焉級は確かに存在します。確かに、終焉級の存在はハッキリしない部分が多く、伝承でも実際に遭遇したとは一言もありません。ですが、かの大国を滅ぼした魔物の強さは現行の危険度では表すことが出来ません」

「……そんなに強いの?」

「はい、これを見て下さい」


 そう言ってザラさんは懐から紙の束を取り出し、テーブルに広げる。


 これは地図? わたしが持っているものよりもしっかりとしていて、この国を中心としてかなり緻密に描かれている。


 そしてもう一つ。


 今度のは少し古びていて、別の場所を描いた地図のようだ。


「こちらが現在のオルゲディア王国の地図です。数年前に作られた物なのでかなり精巧です。そしてもう一つは私の出身地である竜人族の里に伝わる5000年前の地図です。この辺りを見て下さい」


 そう言ってザラさんが竜人族の地図の一点を指さす。


「ちょうどこの辺りが5000年前のオルベスになります」

「あれ? 全然違う」


 その違いは一目瞭然だった。


 この5000年の間に王国の北に()()()()()()()()のだ。


 もしかして――


「そうです。このリベラ山脈は、かつてこの地にあった国が消滅した日に創られました。つまり、終焉級が国を滅ぼした余波で出来上がったのです」


 マジか。それってもう神様の天罰とか言われた方がしっくりくるじゃん。


 地図には等高線みたいなのがあるけど、この山脈って小さいながらも1000メートルくらいあるよ?


 それにオルゲディア王国の国土って平地が多いけど、これも終焉級が国を滅ぼした余波で一回更地になってるってことだよね?


「勝てるかな~……」

「恐らく、終焉級の使ったのは特級魔法です。それも発動に条件があるタイプの。一夜にして国を滅ぼすと言っても、その魔法を扱うとなるとかなりの時間や膨大なマナが必要となるでしょう」

「実戦では使われることはないってこと?」

「まず使えないでしょう。ですので、単純な戦闘ならば勝機はあるかもしれません」


 勝機、ね。本当にあるのかな?


 古代の大国を滅ぼした魔法が実戦だと使い物にならなかったとしても、それだけの規模の魔法を扱えるなら他にも強い魔法使えそうだし。


 最悪、特級魔法の連発なんてこともあり得る。


 そもそも一番気になってることはそこじゃない。


「終焉級のその魔物って生きてるの?」


 生き物なら寿命があるはずだ。


 5000年も前の出来事なら、その魔物は死んでいるかもしれない。


「間違いなく生きているでしょう。人族の寿命は100年足らずですが、魔法を使うことのできる人族はかなり寿命が延びます。種族で言えばエルフの寿命は200年から300年。私たち竜人族は500年以上生きます。魔物の中には1000年以上生きるものもいます」


 一縷の望みは潰えました。


 コレ、絶対生きてるパターンだ。


「終焉級の魔物の目星って付いてるの?」

「魔王と呼ばれる魔物のどれかである可能性が高いです」


 えっ、魔王って一体じゃないの!?


 密かに衝撃を受けている間にもザラさんの話は続く。


「七体居るとされている魔王の中で正体が分かっているのは『吸血鬼の祖(オーバーロード)』『竜王』『白蛇の姫(ゴルゴーン)』『百魔の集塊(ぬえ)』です。しかし、これらの魔物は終焉級ではありません」

「何で?」

「『竜王』は5000年以上前から生きる魔物ですから、その存在は当然認知されていました。残りの三体の魔王はここ500年で誕生した魔王なのです」


 と言うことは、正体不明の三体が終焉級か。


 嫌だなー、会いたくないなー。


 でも多分、コレってフラグ立ってるよな……。冒険の序盤で強い敵の情報が出てきて終盤でボスキャラとして戦うパターンじゃん。


 RPGだと主人公や仲間を育てたり、伝説の武器を手に入れたり、蘇生の秘薬とか手に入るんだけど、ここはリセットボタンも攻略本もない、リアルにファンタジー要素くっつけただけの世界だもんな~。


 当然、死んでもコンティニューできないし、レベルアップシステムもない。ないないだらけのハードモード通り越してルナティックな世界だ。転成特典なかったら生きていけなかったと思う。


 はぁ、嫌だな~。


 今後の展開を想像して落ち込むわたし。


 ギルド長室にお通夜みたいな空気が漂う中、ザラさんが口を開いた。


「シオンさん、貴女に1つ問いたいことがあります」

「……何?」

「もし、終焉級の魔物が出現したとき、ギルドの招集に貴女は応じますか?」


 本当、聞きにくいこと聞いてくれるね。


 だけど、答えないわけにはいかないか。


 ザラさんの質問にわたしは――




シオン「どっかに伝説の剣、落ちてないかな~」

ザラ「えっ?」

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― 新着の感想 ―
[一言] 「もし、終焉級の魔物が出現したとき、ギルドの招集に貴女は応じますか?」本当、聞きにくいこと聞いてくれるね 勝てると思ったら、参加するし、負けると思ったら逃げるよね。
[気になる点]  シオンはどのような回答をするのかな? [一言]  終焉級の魔物は、違うところに転移・転生したというのもありだな。
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